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旅する映画 その1 滋賀県余呉映画祭 


前田壮一郎さん

2009年3月19日。
私は名古屋から各駅電車を乗り継ぎ、
滋賀県の琵琶湖の北、余呉駅に降り立った。
もう辺りは真っ暗だった。

今回私をよんでくれた前田壮一郎さんと、
仲間の田中純子さんが、小さな駅舎で出迎えてくれた。

前田さんは5年前に名古屋から余呉に移り住み、
5町の田んぼで米をつくっている野良師。
澄んだ眼をした青年だ。
冬は地元の冨田酒造で酒をつくっている。

田中さんは、今回映画祭の会場となるはごろもホールで働いている。
この日私は、田中さんのご実家に泊めていただくことになっていた。

前田さんの愛車に乗り、田中さんのご実家、
琵琶湖に面した飯浦という集落に三人で向かう。
ご両親はご健在で今はキノコを栽培したり畑を耕している。

 
田中さんの実家

田中さんは近々、この実家で農家民宿を始めようと計画している。
その最初のお客さんが私ということになった。

夜10時少し前、お宅に到着。この地域独特の瓦屋根の立派な家だった。
お父さんの内貴一男さん、お母さんの内貴和野さんがにこやかに出迎えてくれた。
お茶、手作りの牡丹餅や干し柿、ケーキなどを出してくれた。
前田さんは明日からの映画祭の準備もあり、少しお話をしてから帰っていった。

私と一男さんはその後もしばらく話をした。
昔、山を越えて田んぼに通っていた話、どうやって収穫した米を運んできたかなど、
興味深い話を色々うかがった。


内貴一男さんと和野さん

生まれ育ったこの土地で懸命に働き、子を育て、
親を看取り生きてきたという誇りがこのご夫婦に感じられた。

初めて来た滋賀県。初めて会う人たち。
明日はいよいよ上映だ。少し興奮しながらも眠りに落ちていった。
 
2009年3月20日。
翌朝、部屋の窓から外をみると、琵琶湖が見えた。
ここは山間の集落であることがわかった。
一男さんいわく、この家の二階からの眺めが一番だとのこと。

 
二階からの眺め

琵琶湖でとれたえび、菜っ葉のおひたしなど
手作りのおかずが並ぶ朝食をいただいた。

 
朝食
そして8時過ぎ、内貴さんご夫婦を別れ、
迎えにきてくれた田中さんと共に上映会場に向かった。

道中目にした余呉湖は小さな静かなたたずまいの湖だった。

はごろもホールに到着。図書館も併設されている立派なホールだった。
早速みんなで上映準備を始めた。

私はまず画と音のチェック。
前田さんは受付のセッティング。
受付横のカウンターではコーヒー屋をやる人たちがやってきた。
 
ピンクのジャケットを着ているのが田中さん
10時からまず一回目の上映。上映前にご挨拶をした。
会場内がなかなか温まらなかった。
お客さんは少なかった。

お昼をはさんで、二回目は13:30からの上映。
バラバラと人が集まってきた。
内貴さんもいらしてくれた。

以前、息子さんが宮下家にしばらくいたという宮下さんのお知り合いの方が
彦根からわざわざ見にいらしてくれた。文代さんが知らせてくれたのだ。

大津で自主上映を計画している原田将さんに、この余呉の上映会のことを知らせると、
奥さんとまだ小さい娘さんといっしょに来てくれた。

京都からわざわざ見にきてくれた人たちもいた。
会場もやっと暖まり、人数もそこそこで、少しホッとした。
笑いどころではちゃんと笑ってくれて、いい雰囲気だった。16:00から講演。
質疑応答を中心にお話をした。チーズのこと、学舎のこと、
農業のことなどみなさんたくさん質問をされた。
全てが終わり、宿泊と調理施設のあるところへ移動。

ここで前田さんの仲間たちで収穫祭兼今年もがんばろう会が開催される。
私もそれに打ち上げも兼ねて参加した。
実に色々な人たちが集まっていて、おいしい食べ物がいっぱいあった。
主催者の前田さんは色んな人たちと話をしたり、周りに気を配ったりしていた。

会場で用意されていたお料理は…
・田笑の和のおにぎり(冷めてもおいしい)
・ダチョウ肉の和風ホワイトシチュー(牛乳と米粉と白味噌、だしでつくったホワイトソース)
・しし肉入りおでん(しし肉やわらかかったです)
・太田さん特製ふなずし(参加者の太田さんが毎年漬けられているものをご提供くださいました)
・野良師特製ダチョウ肉の燻製(これは美味い)
・久保さん特製おかき(もう、定番かつ大人気です)
・久保さん特製たくあん(やっぱりたくあんはこうでなきゃ)

食ブースは…
・西浅井町から「納屋BAR」のベルギー瓶ビールと中国茶(岩茶)
・木之本町から「七本槍」の各種冷酒、燗酒
・湖北町から「大戸洞舎」のそば粉ぷりん、そば粉クッキー、中国茶(岩茶)
・彦根市から「五環生活」のフェアトレードチョコ
・近江八幡市から「セブン社」の喫茶コーナー(珈琲&クッキー)

どの人も思い思いに飲んで食べて語っていた。
集まってきた人たちの顔ぶれを見たり、話をしたりすると、
前田さんとはまだよくは話ができていないが、彼の人柄がわかるような気がした。

 
富田酒造のコーナー

富田酒造の若き蔵元

富田酒造の若き蔵元は色んな種類のお酒を振舞っていた。
私はもちろん全種類飲んだ。
どれも味が違ってうまかった。
その中の一つ、「天地の唄」は前田さんがつくったお米でつくったお酒だ。

天然酵母のパン屋さん「パン工房こもれび」のだんなさんは
趣味でふな寿司をつくっていてそれを振舞っていた。
初めて食べた手作りのふな寿司は絶品だった。
日本酒によく合った。あまりにおいしかったので、
「とってもおいしいです。」と直接言いに行った。
しばらくすると、「この食べ方もおいしいんです」といって
ふな寿司のしっぽをお湯につけたものを持ってきてくれた。

前田さんのお米でつくったおにぎりもおいしかった。

コーヒー屋さん

中国茶屋さん

中国茶、コーヒー屋さんも店を出していた。

京都から見に来てくれた二人と
左:鮎子さん 右:原田さん

京都から映画を見にやってきてくれた鮎子さんはジャズシンガー。
彼女が空想の森を見て色々感じて歌いたくなった歌をアカペラで歌ってくれた。
みんなのいる空間に彼女の声が響き渡った。
なんだか新得の映画祭の雰囲気に似ていて心地よかった。


地元のうまい酒と食べ物を食しながら、私は色んな人たちと語り合った。
その中で、空想の森の自主上映会をやってみたいという人が二人もいた。
また滋賀に来られると思うと嬉しかった。

そして最終的には大津から来た原田さんと朝5時過ぎまで話し込んでいた。
色々な人と出会えて本当に楽しかった。
前田さん、私を余呉によんでくださり、ありがとうございました。

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