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旅する映画 その45 歩いて、出会って。

  2009年10月22日。
朝起きると、昨晩は暗くてよくわからなかったが伊藤君の家は、部屋がたくさんあり、中庭も縁側もある純和風の家だった。なぜか白崎さんが来ていた。
今日は、原田君と彦根の奥田さんと三人で、長浜に中野さんのシンポジウムに行く予定だ。

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伊藤君の家

9:00。伊藤君は仕事に出かけていった。私と原田君と白崎さんは朝食を求めて出発。定休日の店が多く、結局大きなショッピングセンター内のコーヒー屋で軽く朝食をとる。原田君は今回の主要スタッフの白崎さん、勝又君と、5月のイベントで初めて会い、その時に「空想の森」上映会の話をして機材などを貸してもらうことになったそうだ。へーと思った。何かをやろうと決めて動き出すと、出会うべき人に出会うのもなんだなと。きっと次に彦根で上映会をする奥田さんもそうなるに違いないと思った。そして白崎さんと別れ、私たちは琵琶湖を左に眺めながら北上し、彦根に向かった。

お昼過ぎ。彦根駅で奥田さんと落ち合った。近くのちゃんぽん屋で彼女が私たちにご馳走してくれた。昨日の上映会で会ったばかりだが、奥田さんは今までのことや今の状況、これからの夢などを私たちに一気に話しだした。自主上映をやろうと決め、奥田さんの中で急速に色々なことが動き出しているのだろう。あっという間に時間は過ぎ、気がついたら13:00を過ぎていた。

私たちはシンポジウムの会場のバイオ大学へ向かった。琵琶湖環境ビジネスメッセということで、色々なことが行われているらしく、広い駐車場にいっぱい車がとめてあった。私たちは20分ほど遅れて会場に入った。中野さんが昨日とはうってかわってぱりっとスーツを着て一番手で講義をしていた。残り10分ほどしか聞けなかったのが残念だったが、パネリストの方々の実際に活動されている話を聞けてとてもよかった。パネリストはこんな人たちでした。

R0010874パネリストの方々

塩見直紀氏。半農半X研究所代表。永続可能な小さな農ある暮らしをベースに天職、ミッションをおこなうライフスタイルを「半農半X」と呼び、提唱。
大石尚子氏。同志社大学大学院ソーシャル・イノベーション研究コース在籍・染織講師。糸紡ぎワークショップなどを通じて暮らしのあり方を考える「スロークルーズ」を提唱し、衣の自給の社会的意義と可能性を研究している。
菊池玲奈氏。滋賀経済同友会・企業と生物多様性研究会。多様な人々の「思い」を引き出し、自然再生や活性化に結びつけるための「協働プロジェクト」のコーディネーターとして活躍。

私は自分の映画上映で各地を歩きながら、今、多くの人たちが、自分の価値観、何を大切にしてどう生きていくのかということを問い直していると感じている。そういう意味でも私にとって、タイムリーな話を聴くことができてとても有意義だった。一人一人の個の意識が、社会を変えていくのに大事な要素なのだと改めて思わされた。

シンポジウムが終わり、原田君と奥田さんも中野さんのストローベイルハウスをいっしょに見に行くことになった。環境メッセの色々なイベントが終わったらしく、車が一斉に駐車場から出て、琵琶湖沿いの道はしばらく渋滞が続いた。琵琶湖の夕景は素晴らしくきれいだった。原田君はいつも対岸の大津側から琵琶湖を眺めている。彦根側から見る琵琶湖もまた違って素晴らしいもんだなあと言っていた。滋賀の人はいつも琵琶湖を見ていて、気持ちの中にいつでも琵琶湖があるのではないかと思った。

渋滞のせいで随分時間がかかって中野さんの家についた。車を降りると、風がびゅーびゅー吹いていた。真っ暗でよく見えなかったが、家の前の道を渡るとそこは琵琶湖なのがわかった。
中野先生の家に入ったとたん、私はバンクーバーの空気感を思い出した。バンクーバーにいた時、友達の家に遊びにいった時の感じがよみがえった。
中野さんがいれてくれたコーヒーを飲みながら、藁の家の話をした。「藁の家」とは、藁ブロックを積み重ねて、その上に土などを塗って壁に仕上げた家のことで、英語ではストローベイルハウス(straw bale house)と呼ばれている。壁厚は40センチにもなり、高い断熱性と防音性を生み出すといわれている。
妻の和子さんも帰ってきてご挨拶をした。活動的な感じの人だ。間もなく原田君と奥田さんは帰っていった。
夕食は中野夫妻と蒔郎君、平君の二人の息子さんとレストランに行った。中野さんは、バンクーバーのUBCという大学で9年間勉強をしていた。長男はそこで生まれた。和子さんはバンクーバーでの生活がとてもよかったそうだ。とんかつを食べながら、カナダのこと、今日のシンポジウムのことなどを話した。

私は今日のシンポジウムで湧いた疑問を中野さんに質問をした。その質問の答えの中で、へー、そうだったんだということがあった。それはこんなことだ。エコノミーとエコロジーの語源は同じで、ラテン語ではoikos(オイコス)から生まれた言葉。オイコスは人の棲家という意味。棲家の性質についての認識をエコロジー、棲家を管理する営みのことをエコノミーと呼んだ。つまり、経済学とは暮らしの学問だという。どう暮らしていくのかということは、経済学に直結することなのだということがわかった。

家に帰り、ワインを飲みながら少しお話をした。中野さんは今週は色々なイベントが立て込んでいて忙しそうだ。私は明日、彦根城を見学してから京都に営業に行くことにした。そして藁の家のゲストルームで気持ちよく眠った。

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2009年10月22日。快晴。
朝起きると、和子さんがちょうど出かけて行ったところだったので、玄関の外でご挨拶をして別れた。

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そして太陽の光に照らされた藁の家を見た。
朝食をいただく。コーヒーとパンとブドウ。明るいとこれまた家の中は気持ちがいい。中野さんは土壁が何種類かあることを見せてくれた。

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ストローベイルハウスは、もともと乾燥した北米の家なので、琵琶湖のほとりの湿気が多いこの土地でどうなのかは実験中とのこと。現在5年たっているが、今のところ何も問題はないそうだ。窓枠も木なので、結露は全くないそうだ。

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「少し散歩しましょう。」と中野さん。犬を連れて目の前の琵琶湖へ。砂浜。向こうが見えないところもあるので、まるで海のようだ。
中野さんは仕事の前によく散歩をするそうだ。大学の研究室からも琵琶湖が眺められるという。夏は泳ぐ。琵琶湖の暮らしを楽しんでいるなあと思う。

R0010875中野桂さん

今日は高校で講義をするとのこと。半そでのポロシャツ、ジーンズにスニーカーという出立ち。「いつもこんな格好で大学に行くんです。スーツは年に一回くらいしか着ないんです。だから昨日は珍しかったんですよ。今日は高校で教えるからスーツを着ていった方がいいんだろうけど、ちょっと考えたけどいつもの服にしました。」と中野さんは言った。

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彦根城の入り口まで車で送ってもらった。城の周りは文教地区になっていて、中野さんの滋賀大学、高校などが隣接している。ついでなので城の周りをぐるっとまわってくれた。ランチのおいしい店も教えてくれた。滋賀大学の中に木造の味のある講堂があった。ここで一昨日、澤地久枝さんの講演会をやったそうだ。そして彦根城の入り口で降ろしてもらい、中野さんと別れた。

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彦根城は小さな山の上にある。日差しが10月と思えないほど強く、歩くと汗をかいた。木々の緑がとてもきれいだった。400年前につくられた彦根城の天守閣から城下の町並みを眺めた。過去からずっとつながってきて、今の人の暮らしがあるんだな、などとぼんやりと思ったりした。

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私はもう京都で営業するのはやめてゆっくり帰ろうと思った。携帯電話を見たら、奥田さんから電話が入っていた。かけてみると、私に渡したいものがあるからとのことだったので、彦根城入り口で待ち合わせることにした。

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奥田さんはほんとに城の入り口に車を止めて私を待っていた。私は京都に行くのをやめてゆっくり帰ることにしたと言うと、だったら家に泊まっていったらどうですかと言われ、そうすることにした。

とりあえずお昼ご飯を食べに行こうということになった。私はさっき中野さんから教えてもらったこの近くの「朴」という店に行きたいと言った。奥田さんはその店を知らなかった。そこで私たちのすぐ横で客待ちをしていた輪タク(自転車でかごを引っ張る観光用)の人の良さそうなお兄さんにその店の場所を尋ねると、とても親切に教えてくれた。その店はすぐ近くだったが、せっかくだから乗ったらいいよと奥田さんにすすめられ、私は輪タクにい乗ることにした。

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自転車でひっぱられ、店までしばし観光を楽しんだ。奥田さんは自分の車を駐車場に移動しに行った。輪タクを降りてからも、そのお兄さんとの会話の流れで、私が映画の上映で滋賀に来た話になり立ち話をしているところに奥田さんもやってきた。今度彦根で奥田さんが上映会をすることになったことを言うと、ぜひ見に行きたいから知らせてくださいと彼は言った。お兄さんの名はハジメという。「やったー、もうお客さん一人確保したね。ハジメちゃん、絶対来てね。」と私たちは盛り上がった。その後もひとしきり話をした。

R0010896ハジメちゃん

「もっと声張って押し強くいかないとお客さん逃がしますよ。」奥田さんがハジメちゃんにダメ出しをしていたのはおかしかった。私を待っている間、奥田さんはハジメちゃんを観察していたらしい。彼女によると、乗りたそうにしているお客さんを何人か逃していたらしい。別れ際、ハジメちゃんは、写真を撮らせてくださいと言って、自分のデジカメを出し、私と奥田さんを自分の輪タクに座らせ写真を撮った。なんだか面白い出会いだった。

R0010897朴。ランチがおいしかった。

そして私たちはお昼ご飯を朴で食べた。私は彦根城を歩いて喉が渇いていたのでビールも飲んだ。昼のビールは格別にうまかった。ランチは家庭料理でとても美味しかった。いいお店だった。

R0010899奥田好香さんと娘の寿美さん

そしてこの晩は奥田さんの家にお世話になった。彼女と色々なことをゆっくり話せてとてもよかった。きっと彦根もいい上映会になると思う。

今回の大津上映会もなかなか面白かった。また新たな出会いがあった。
人の心を動かす。これはすごいことだ。「空想の森」は少なからず、人の心を動かしている。映画はきっとエネルギーの塊なんだと思う。そのエネルギーは人の心を通して伝わっていっている。

No Responses to “旅する映画 その45 歩いて、出会って。”

  1. 1
    ハジメ:

    田代監督、お元気ですか?
    押しの弱い自転車タクシードライバーのハジメです。
    あれからひと月が経ちましたね。

    彦根はこれから紅葉のシーズンに入ります。
    ハジメの客引きはいまだに押しが弱いままですが、
    ガイドの経験も少し積めてきたのでお客様には
    楽しんでもらってます。

    彦根での上映会、楽しみに待っています。
    では また
    よい風が吹きますように。

  2. 2
    田代陽子:

    ハジメさま
    コメントありがとうございます。
    ハジメちゃんの押しの弱いところが、これまた好感が持てるとも私は思ってます。
    今度彦根に行く時は、ハジメちゃんの自転車タクシーで長いコースを観光したいと思っています。
    奥田さんは着々と上映会の準備をすすめていますよ。
    ぜひ協力をお願いいたします。
    よい風を吹かせましょう。
    田代陽子

  3. 3
    奥田 好香:

    奥ちゃん
    はじめちゃんへ
    アドレスがわからないので、この場をお借りします。
    初めて会った日から何回か、はじめちゃんを探しに彦根城へいったんですよ。でも、いつもの場所に誰もいなかったり、はじめちゃんじゃない人がいたり、携帯にも何回か連絡しましたが繋がらなくって…。はじめちゃんの輪タクでお堀を回ってみたいのですが。
     「空想の森」彦根上映会について監督と相談して、10月の中旬位を予定しています。他の人に上映会の事を話しても「いつあるんですか?」って聞かれるんで、とりあえず上映会の日を先に決めて協力してもらえる人を探す事にしました。是非、はじめちゃんにも「空想の森」彦根上映実行委員会のメンバーになってもらえたら心強いです。そして、一緒によい風を吹かせたいです。

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