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旅する映画 その50 滋賀会館シネマホール物語 part.2  

  彼岸の頃。この旅日記を書いている最中、本当に久しぶりに親友たちと食卓を囲み、深夜まで話をした。お腹がよじれ、涙が出るほど笑った。そうして笑い飛ばした翌日、春がやってきていた。まだ雪をかぶっている日高山脈や畑だが、冬の冷たく張り詰めた空気越しに見るのと、柔らかく緩んだ空気越しに見るのとでは、その表情は随分と違う。私たちはそれぞれ、まだ雪残る春の大地に一歩づつ、また歩き出して行くのだ。

 

2010年2月19日~28日、滋賀会館シネマホールで「空想の森」が上映された。連日関連イベントも開催した。劇場スタッフ・空想の森近江応援団の人たちと笑い、泣き、食べ、飲み、想いを共有した。10日間、毎日がドラマだった。

 

2010年2月19日。
  前日はあまり眠れず。吹雪の中、帯広空港へ向かう。今回は初日と2日目は18:30からの上映。3日間の休みをはさんで2月24日~28日は朝10時からの上映スケジュール。初日は上映前の17:00からお米の食べ比べのイベントから始まる。

  私は無事大津に到着。彦根の奥田さんが迎えてくれて、滋賀会館4階の文化実習教室に直行した。入り口には、今回の上映とイベントに協力してくださった「空想の森」近江応援団の名前が模造紙に張り出されていた。彦根上映実行委員会の奥田さんが書いてくれたのだ。そこにはずいぶんたくさんの名前があり、嬉しくなった。中に入るともう30人以上の人たちがいて、にぎやかだった。余呉の前田壮一郎さん、大津の原田将さん、草津の仁張将太さん、ブルーベリーフィールズ紀伊國屋の岩田康子さんも準備におおわらわしていた。彼らの顔を見てまた嬉しくなる。
 
  受付には「おいしい」って何だろう?という、今日食べくらべをする滋賀県産の5種類のお米の解説を書いたものがあった。コシヒカリ、キヌヒカリ源渡米、ミルキークイーン、日本晴、滋賀旭27号。仁張さんが書いたそうだ。裏にはこのイベントの主旨と協力者の名前がずらっと書かれていた。なかなかいい説明書だ。

 そして朝からこのお米1升づつ、カフェテリア結のかまどで丁寧に炊き、5種類のおにぎりをにぎったのだ。紙皿にお漬物がそえられて、テーブルの上に並んでいた。岩田さんは大きな寸胴鍋に味噌汁をつくっていた。岩田さんの呼びかけで、京都大学の学生さんたち5人が手伝ってくれた。奥田さんの呼びかけで近江八幡で和茶庵というお店をしている4人の女性たちも手伝いに来てくれた。その中の一人、大谷園の若嫁・大谷衣里子さんは、ほうじ茶を出してくれた。

  参加者は20人以上いただろうか。5種類の形ににぎられたおにぎりを食べ、少ししてから、生産者の仁張さんと前田さんの解説が始まった。仁張さんは緊張気味だった。でも彼の話し振りから、米作りがおもしろくてしょうがないという気持ちが伝わってくる。こんな若者を前にすると日本の未来も明るいと思ってしまう。やはり、米はうまいわ。それぞれ食感や味が微妙に違った。かまどで炊いたから余計においしいのかもしれない。お味噌汁、お漬物、お茶もおいしく、参加者のみんなも満足気だった。


劇場入り口

 私は上映の準備のため先に退席し劇場に向かった。お米の話など、話が盛り上がったようで、みんな上映ギリギリの時間に劇場にやってきた。劇場スタッフは瀬藤さんが一人でもぎりと映写の担当だ。けっこう大変なのだ。初日、30人ほどの入りだった。まずまずというところか。上映の前にお礼とご挨拶をした。いよいよ上映が始まった。音がずいぶん小さく聞こえたので、瀬藤さんに何度もボリュームを上げてもらい、ちょうどいい音量に調整してもらった。画もいい感じで上映環境はばっちりだ。
 
  上映後はライブがあるので短めに話をした。映画が完成してから今までどんな風に上映をしてきたかということ、どこへでも私が上映にいくので、自主上映をしたいと思ったらぜひやりましょうということ、自主上映の面白さ、大きなスクリーンで映画を観ることの面白さ、もうすぐ閉館になる滋賀会館だが、空想の森の上映と関連イベントで滋賀県の近江応援団の人たちといっしょに楽しくおいしく盛り上げていきたいことなどを話した。そして質問を3つほど受けた。森源太さんのライブが終わると劇場ロビーはにぎわった。観終わったお客さんたちが私に直接感じたことなどを話してくれた。それが何より嬉しいことだ。あっという間に閉館時間になった。      
  そして興奮さめやらないまま、劇場スタッフ、ライブをした森さん、奥田さん、前田さん、原田さんなど近江応援団の人たちと大津駅近くの台湾料理の店に向かった。米の食べ比べイベント、初日の上映が無事終わったこと、そしてこれからの上映とイベントの成功にむけて乾杯をした。
 
  滋賀会館の閉鎖問題について、前田さんのブログの中で「僕は滋賀会館が大好きです」という文章を書いていた。とてもいい文章だったので、これをプリントアウトして上映期間中壁に張り出したらどうかと私がみんなに言ったら、ぜひやろうということになった。奥田さんがそれをつくることになった。みんなが集まって一つのことをやる。ああした方がいい、やっぱりこの方がいいという風にどんどん変わっていき中身が濃くなっていく。うまくいくかどうかなんて誰もわからない。でもこれが面白い。私は気分が高揚していた。いい夜だった。

末富さんご夫妻

 2010年2月20日。 
  浜大津で月に1回、朝市をやっている元締めの末富さん夫妻に会いに行ったらいいと前田さんにすすめられた。そんなわけで朝、眠い目をこすりながら散歩がてら浜大津駅に行ってみた。駅構内に末富さんは店を出している。石鹸、調味料、そして琵琶湖でとれた小魚の甘露煮などなど、色んなものを並べていた。店の準備が終わった頃、末富夫妻に話しかけてみた。コーヒーをご馳走になりながら、私は「空想の森」の上映のことを話し、末富夫妻はなぜ朝市をやるようになったかを話してくれた。その中で、現在詩を書いたり、画を描いたりしている娘さんのこと、新しい伝統をつくろうとこの3月から始める「きつね祭り」の話も聞いた。初めてお会いして話したのだが、何だか共通するものを感じ、話もはずんだ。素敵なご夫婦だった。今日は店の営業だけで、朝市は明日の日曜日にあることがわかった。 

ライスバーガー
 
  少し早めに劇場へ歩いて行った。今日の食べ物は、オープンセサミの元スタッフの堀口さんがライスバーガーとおばあちゃん直伝のおかきをつくってきて売り、大谷園のほうじ茶は奥田さんが出すというふうに算段してくれた。ロビーの一角で店の準備を始めた。奥田さんは本当に楽しそうだ。劇場スタッフは受付が丸山さん、映写が中野さん。

奥田さん。期間中、細かなことに色々気を配ってくれた。

  FM草津のパーソナリティの女性がお子さんを連れて観に来てくれた。その時、明日の番組にゲストで出て欲しいと依頼されたが、私の考えを伝えた。今回は映画の上映はもちろんだが、多くの地元の人たちの協力のおかげで連日、関連イベントが充実していること・そして滋賀会館閉鎖に揺れる中、少しでも盛り上げたいというみんなの思いでやっていることを伝えた方がいいと思うので、このイベントを中心になってすすめている劇場スタッフの野田さんと米の食べ比べで協力してくれる草津の仁張さんに話してもらった方がよりいいと思うと。
 
   2日目20人。オリンピック・フィギュアスケート女子の試合が真っ盛りの中、わざわざ劇場に足を運んでくれたのだ。本当にありがたい。ライスバーガーとおかきの売れ行きもいい。客入れが終わり落ち着いた頃、劇場スタッフも食べていた。「おいしいです。すごくボリュームがあって腹持ちよさそうです。」と。奥田さんが私の分も確保してくれたので後で食べるのが楽しみだ。この日は音が大きすぎた。昨日はあんなに小さく聞こえて上げたのに、今日は音がでかすぎる。6,7回ほど、中野さんに音を下げてもらい、ようやくちょうどいい音量になった。ほんとに毎日違うからチェックは怠れない。入りの人数、室温、湿度など関係するのだろう。
 
  この日、上映中に突然ブザー音が鳴ったりするアクシデントがあった。映写の中野さんが後で私に申し訳ありませんでしたと深くあやまってくれた。原因は施設の老朽化らしい。もう閉鎖が決まった滋賀会館は故障しても直してはくれない。事実、ロビーの空調が壊れているが直してもらえず、電気ストーブをたいている。私は中野さんに「びっくりしたよね。でも仕方ないよ。ただ、上映後にお客さんに理由を言って謝ろうよ。」と言った。私は、いいと思ったこの映画を劇場スタッフ・応援団の人たちといっしょにお客さんに届けているという気持ちだった。自分もずいぶん変わったなあと。ちょっと前の私だったら、何たることか!と、えらく怒っていただろう。私もやっと気持ちに余裕が出てきて、周りの人たちの状況や気持ちを考えられるようになってきたのだと思う。

   この日の上映後の質疑応答は、今まで一番面白かった。色んな質問や意見や感想が飛び出し、活気があふれた。私もひとつひとつ精一杯答えた。お客さんは私が思っていることを言ったり、逆に思ってもみなかったようなことまで感じていたり、ほんとうにひとりひとりの感性は素晴らしいと思う。お客さんと通じたというか、一方通行でなくキャッチボールできたようなそんな感覚を覚えた。素晴らしい質疑応答の時間だった。

旅する映画 空想の森の今までの分をプリントし、お客さんが読めるように奥田さんが作ってくれた。

   ロビーに出ると、パンフレットとCDの特設売り場を奥田さんがつくってくれていた。だからかわからないが、よく売れた。私は字があまりきれいでないのと恥ずかしいのでサインが苦手だ。出来るだけしたくないのだが、サインをした方がパンフが売れるようだ。ああ、映画をつくってよかったなあと、心底思った。
   興奮さめやらない私と奥田さんは、劇場スタッフに教えてもらった出汁まきたまごのうまい店に行き、素晴らしい上映の余韻にしばしひたった。

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