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旅する映画 その52 滋賀会館シネマホール物語 part.4

ロビーにて。左から原田さん、坪山さん。

2010年2月24日。
9:20に劇場へ行き、お客さんを迎えた。今日から28日まで朝10:00からの上映だ。31人のお客さん。平日の午前中でこの数はすごい。
   おばあさん三人組が後ろの方で観ていた。画面を観ながら話をしていたというより、ついつい言葉が出てしまっているという感じで、それが上映の雰囲気を柔らかく温かいものにしていた。ずっといっしょに観ていたかった。今回音は大きすぎず、小さすぎずばっちりだった。

 11:30。原田さんと坪山さんがやってくる。原田さんは天然酵母パン、坪山さんはランチボックスをつくって27日まで連日ロビーで販売する。劇場側では共働学舎からチーズを取り寄せて販売もする。映画を見た後はお昼だ。おなかもすくし、お客さんにきっと喜んでもらえるに違いない。
 天然酵母パンは七本槍(富田酒造)の酒かす入りでプレーンとくるみの2種類。ランチボックスはキッシュ、黒豆、厚揚げカレー風味、なますなどのおかず8種入り。おかずは日替わり。

ランチボックス。日替わりでいつも2種類用意してくれた。
  
   チーズはレラ・へ・ミンタル、コバンだった。しかしチーズが少なすぎた。そして野田さんはどんな風にチーズを提供するか想像できなかったようだ。チーズを扱った経験がない人には無理もない。私は映画製作中に共働学舎のミンタルでアルバイトをしていてチーズを扱った経験があった。なんとかしようと考えた。まだ4日間あるのですぐに追加注文をした。そしてサンドイッチにするのは無理だったので、原田君のパンをスライスし、その上にチーズをのせて一皿300円で販売するのと、モノが来たらそのままチーズを売ることにした。坪山さん、原田君、野田さんにチーズの切り方など教えてサンプルをつくり、その場にいたスタッフみんなで試食をした。パンもチーズもおいしいと好評だった。

原田君が焼いたパンとチーズ盛り合わせ。 

上映後、案の定お客さんは一直線に食べ物の方へ。私もいっしょに売った。あっという間に全てが売り切れた。坪山さんと原田君も手ごたえを感じたようだ。そして明日の仕込みのため早々に帰っていった。
   夕方、奥田さんに確保してもらっていたランチボックスを食べた。酸味、甘み、塩気、色んな歯ごたえがあり、バランスがよく、本当においしかった。疲れた体に力を与えてくれた。

 

2010年2月25日。
 
滋賀会館では谷と言われる木曜日。26人のお客さんを迎えた。その中に浜大津の朝市の末富さんご夫妻が娘さんといっしょに来てくれた。

  11:30。原田君、坪山さんが到着。早速売店の準備を始める。今日はレラ、コバン、さくらの3種のチーズを売る。坪山さんはオーガニックの赤ワインも持ってきた。盛り合わせとセットでも売るのだ。試飲したがおいしいワインだった。

  奥田さんは模造紙に上映期間張り出すものを製作していた。前田さんの「僕は滋賀会館が大好きです」の文章を張り、「大津っていいとこやん」と題し、滋賀会館の「空想の森」初日の様子の写真や、浜大津の朝市の写真を貼ったりしていた。そして奥田さんは滋賀県民として滋賀会館を閉鎖し使わなくなることをもったいないという意見も盛り込んだ。

  上映後、また食べ物に人が殺到。完売した。チーズってすごい人気なのだなあと改めて感じた。上映後に、何人かのお客さんとしばらく話をした。その中に、この劇場は音も画もいいですねえという人がいたので、劇場スタッフの瀬藤さんに直接話をふった。瀬藤さんも嬉しそうだった。

  奥田さんのつくった張り紙を見た若い女性が、滋賀会館、そしてシネマホールが閉鎖になることを初めて知ったと話しかけてきた。自分が小さい頃、ここの大ホールで映画を見たことがあったが、その後一度も足を運んでおらず、今日来たら来月閉鎖と知り、こんないい映画館があったなんて知らなかった。閉鎖しないで欲しいと話していたので、直接瀬藤さんに言ってくださいと話を向けた。瀬藤さんは嬉しそうだったが、どうしようもならないことも彼女に説明していた。

お客さんと話す瀬藤さん。

 私は地元の人に、映画の上映を通して滋賀会館のことを少しでも知ってもらえて、そしてこうやって話をすることができてよかったなあと思った。今日もいい上映だった。

17:00。宿に戻り遅いランチ。坪山さんのランチボックスは今日もおいしい。そして駅のイタリアレストランでワインを飲んでいる奥田さんからメールがきたので、まだ今日の上映の興奮さめやらない私も合流した。ワインと野菜の前菜を食べながら二人で乾杯した。

 
2010年2月26日。
  
今日は14人のお客さんだった。余呉上映の時にお会いした太田さんが、手作りの鮒鮨を差し入れてくれた。大津上映の時にお世話になった伊藤さんも来てくれて嬉しかった。
  私は疲れのピークだったので、この日は早く帰って宿で休むことにした。
 

2010年2月27日。
  
今日は37人のお客さんを迎えた。ほっとした。この日は上映時間とバンクーバーオリンピック女子のフリーの放映時間が重なるのにもかかわらず、劇場にいらしてくれて本当にありがたい気持ちでいっぱいになる。
  
   映像と音のチェックを終えてロビーに出た私に、瀬藤さんが携帯を私に見せた。浅田真央さんのフリーの演技が映っていた。瀬藤さんといっしょに真央ちゃんの演技を見た。鐘という荘厳な曲にのって、今の自分の全てを出そうとする真央ちゃんの気迫・凄みが小さな画面から伝わってきた。もっと素晴らしい演技をしたいという志、あきらめずに努力し挑戦し続けたものがすべてあの演技に出ていたと思う。とても感動した。
   4年前のトリノオリンピックの時、私は手術をして実家で療養中だった。動けなかったので連日オリンピックを見ていた。撮影が終わったばかりの段階で、まだどう編集するのかも全く決まっていなくて、先の不安でいっぱいの時だった。その時、女子フィギュアスケートの荒川静香さんの演技を見てとても感動し、どれだけ勇気をもらったことか。
 
  あれから4年。私は納得いくまで編集・仕上げをして映画を完成させ、そしてその映画を全国で上映して歩いている。その時その時はいつも必死だからよくわからないが、振り返ると、よく完成させたなあ。そして今までよく上映を続けてこられたなあと感慨深い気持ちになる。

 「今日は市場をやっていますよ」と瀬藤さんが私に言った。1階の外に出てみると、近郊の農家の人たちがつくった野菜を売りにきていた。焼き芋も売っていた。
  県庁では映画の撮影中とのことでなにやら人がたくさんいた。堤真一さんや岡田准一さんも来ているらしい。
  「がんばっているねえ。観たお客さんがいい映画だったってみんな言っていたよ。チーズもおいしかったって。」と文化サロンの景子さんに声をかけられた。1月に宣伝に来た時、取材などで文化サロンを使わせてもらった。その時お話したので私の顔を憶えてくれていた。

左が文化サロンの景子さん。 

 そして野菜を売っている農家の人たちに、私の映画を宣伝してくれた。「志はみんな同じなんだから。」と景子さんは言った。私はすっかり嬉しくなった。そういえば、余裕がなくて今回まだ文化サロンに顔を出していなかったなあと思い、チーズの試食を持って文化サロンに行った。 
 
明日はいよいよ最終日だ。


文化サロンにて

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