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金森ホールにて 2010年5月23日

「空想の森」感想いろいろ
2010年5月23日・北海道函館市・金森ホールにて
上映してくれた人 : マザーアース実行委員会のみなさん ありがとうございました!

こういう暮らしをしている人達がいることを知って、心の底から嬉しくなると同時に、そう思うということは、自分が「街」に住んで山田さんたちのような暮らしからは距離があるのだなあと感じました。どこかうらやましい、なつかしい、嬉しい、不思議な感想です。まだうまくまとまらなくてすいません。

(男性・26歳・パン屋)

食料自給率をあげなければ!と、近くでとれた安心のものを食べたい、と考えてきて、自分の分くらい作れないかと勉強中です。目指すは自然農法。共働学舎さんは、宮嶋さんのお話を聞いていて、自然素材の建物のマイナスイオンが人に与える影響とか、循環した生活と楽しく働くかきねのない暮らしがすごいな、と思っていました。将来エコビレッジを目指す私にとても参考になりました。映像で見られて、実際の感じがつかめました。正しい仕事。時々音楽やお酒を楽しみながら作った食べ物で生きる。できそうかな、と思いました。腑に落ちる というのは大切ですよね。菜食の自分としては牛が少しかわいそうでしたが・・以上になります。このたびはありがとうございました!

(女性)

すごい日常的な場面が、ある程度スパンで続いているシーンを繰り返し見ることで、登場した人たちの心の中も自分の中で感じれたように思い、「みじか」な思いでスクリーンに吸い込まれてしまったという気がします。インタビューが「です・ます」調じゃなくてあったかい感じがしました。

(女性)

生きることについて考えました。毎日をもっとていねいに過したいと思いました。行動しないと始まらない、行動しないと変わらない。野菜やお食事がみんなおいしそうでおなかがすいてきました。土に触れて地球を感じたい!!

(無記名)

映画もとてもよかったですが、田代さんの存在がとても素敵で刺激になりました。物を作る事に対してのパワーを頂いた様に思いました。ありがとうございました。これからのご活躍に期待しております。

(女性・37歳)

3回目です。試写も含めたら5回目。でも見るたびに新たな発見があり、楽しい映画です。今回は見ている間は、山田さん、宮下さん2組の夫婦のありようがそれぞれ面白くて。ただ見終わったときに、この映画の主体は、新得の大地なのかなと思います。普段は農業と全く縁の無い生活をしているのに、この映画をみると、土が生み出すもの、その力に私たちは生かされているのだなと感謝の思いが湧き上がってくる気がします。雑草だらけの畑でていねいに草をとる姿に人間本来の姿を感じます。田代さん、お元気で息長くがんばってください。

(女性・62歳)

大変良かったです。すごく良くできたドキュメンタリー映画だと思いました。私の家も農家なので、自分の幼い頃と重なる部分があって、忘れていた過去が鮮明に思い出されました。畑の中で眠った事等、気がついたら陽が傾いていた事等々・・・思い出していました。いつの間にか自分も映画の中に入っていました。本当に良かったです。ありがとうございました。

(女性・46歳・福祉関係)

自分は田舎育ちなので、最初は見慣れたような風景、生活、と思っていましたが、今、仕事をやめて人生の選択をしようと考えている私にとって、とても魅力的にうつりました。元気もらいました。そして他人の人生、生活を知るというのはとても楽しいな、と思いました。

(女性・28歳)

山田さん(妻)と子供さんのやりとりがすてきでした。映画祭に行ってみたいです。町の人達に会ってみたいです。

(女性)

豊かな時間と場所で、食べ物もとても美味しそうで、生活をおろそかにしない、という事がいかに大切かという事を改めて思いました。

(女性・32歳・事務職)

上映時間が長めなのはチラシにも書いてあるので分かっていましたが、上映後、トークショーがあることなども、チラシやせめて上映前のアナウンスにて告知した方がよかったです。帰りの時間がある人もいますから。オープニングのタイコも、もっと短くて良かったかも。映画自体は興味のある内容でもあり、楽しめました。トークショーにもっとリハーサルが必要だったのではないでしょうか。

(男性・36歳・自由業)

大量生産の食べ物やものがあまり好きではなく、作っている人の気持ちが届くようなものが好きで、宅配の野菜や有機野菜とか食べているのですが、これを作っている人はどんな人なのだろう、と思うことがあり、作っている人は違うけど、そんな気になっていた事が少しわかったような気がしました。

(女性・33歳・主婦)

2歳の娘がいるので、農業しながらの子育てしている姿がとても印象的でした。宮下夫婦のやりとりも、とてもおもしろかった。

(女性・27歳・主婦)

気になりつつ初めてみました。ほんとに、おいしそうでした。チーズ買いましたよ!映画がステキに育っていくことを願っています。

(女性・46歳・会社員)

人との会話とか、自然との会話とか、当たり前にできることなのに、今までちゃんとできていたのかなと、ちょっと不安になりました。あと、おもち食べたくなっちゃった。

(無記名)

日常なのに本当に楽しそうで、私も生活を見直したくなりました。

(女性・27歳・自営業)

とてもていねいで自然な映画でよかったです。

(無記名)

野菜がとてもおいしそうで、食べたくなりました。普段何も考えずに食べている物に、こんなに手間がかかっている事に改めて気付かされました。

(女性・43歳・主婦)

チーズをつくっているところでJAZZがかかっているのがかっこよかった。途中で少しあきてしまった。こういう暮らしにあこがれている人じゃないとあきるのかも。ラストの演奏シーンはとってつけたようでイマイチ。

(38歳・アルバイト)

w山田家のルーツがわかってびっくりしました。畑のやり方を教わろうと思います。

(女性・42歳・NPO職員)

北海道に長く住んでいると気がつかないことがたくさんあると知らされた。

(女性・43歳・会社員)

旅する映画 その54 パラダイスファーム  

 
今回主催してくれたとりのす農場の藤原有二さん

 4月に入った。共働学舎の育苗ハウスの中は、苗たちがかわいい盛りだ。十勝は雪も少なくなり、春がやってきた。人生の節目・旅立ちの季節でもある。新天地へ移り、新たな暮らしをスタートさせる人、次へのステップのために旅に出る人。人生のある時期を共有した友人たちが、この春エイヤと動き出す。

  私の方は映画が完成して3回目の春を迎える。今までまいた種が芽を出して、育っていけばいいなあと思っている。映画をつくるのにもえらく時間がかかったが、上映を広めてゆくことも同じように時間がかかる。移り変わりの速い情報化社会の中で、私はカメのような歩みを続けている。

 映画を自分で直接届けることで、観客の人たちの感覚を肌で感じられる。そして人との出会いがある。「空想の森」の上映をすることで人と人とがつながり、その後も様々な形でつながっていっている。

  この映画を観たい人はまだまだいるはずだ。その人がいる限り私は映画を持って上映に行く。

 一年前の冬、とりのす農場の藤原有二さんから自主上映をやりたいと電話をもらった。そして藤原さんは仲間を募ろうと近所の有機農家の人たちに集まってもらい試写会をした。しかし賛同を得られず、その冬は実現できなかった。でもいつかきっと上映しますからとメールがきた。私は「空想の森」は腐る映画ではないからと返信した。
  そして一年後の冬、再び彼から連絡が来た。私はとても嬉しかった。

  パラダイスファームでの上映で一番感じたこと。映画は人を結ぶ。そして人が映画をつないでいく。

2010年3月6日。
 久しぶりの道内の上映だ。上映機材、物販、シュラフや毛布なども車に乗せ、少し早めに出発。狩勝峠を越え富良野を過ぎ、美馬牛のゴーシュという店でお昼ご飯と休憩。自家焙煎のコーヒーがとてもおいしかった。雪のちらつく中、パラダイスファームを目指す。


上映会場の納屋 

 少し迷って14:30過ぎに到着。大正時代の納屋を移築した建物と聞いていたが、とてもおしゃれな感じの納屋。中に入ると、服、小物、野菜など色んなお店が並んでいてにぎわっていた。

  私は主催者のとりのす農場の藤原さんと場所を提供してくれたパラダイスファームの大井健太郎さんにごあいさつをして今日の上映の段取りを確認した。藤原さんは張り切っていた。

 

  そして日が暮れるまでに時間があるので、私もフリーマーケットを楽しんだ。綺麗な布を売っているのかと思いきや、フンドシだった。売っていた女性がとても感じのいい人だった。東京の人で、フンドシ一本でやっていこうと思い、近々このあたりに引っ越してくるとのこと。フンドシは全て彼女の手作りで、オーガニックコットンや麻が素材だ。フンドシのさきっちょに古布のポケットがついていたりしておしゃれなのだ。紐も古布を使っていた。おばあちゃんの古い着物をほどいて使っているとのこと。高崎の上映会の時に出会った人からもフンドシの良さを教えられていたので、試してみようと思い、フンドシ2本を買った。それから愛用しているのだが、すこぶる気持ちがいい。

フンドシ屋さん 

 そして納屋の隣の大井さんの自宅の方におじゃました。大井さんは奥さんのタカエさんと8ヶ月の友朗くんの3人家族。2003年から水田だったこの土地で、トマトの栽培を始めた。そしてジュースをつくっている。納屋はトマトジュース加工室と販売所なのだ。この納屋を気に入った藤原さんが、ぜひここで上映会をやりたいと思い、今夜一年越しで上映にこぎつけたのだった。

大井さんの自宅

 大井さんの自宅も、とても素敵だった。1階がワンフロアでキッチンと食卓とパソコン机。ウッドデッキがあって大きな窓からの眺めがとてもいい。病院からもらったという木の下駄箱や長いすなどもいい味を出していた。がっちりした木のベビーベットが存在感がある。1階は土足。アメリカの小さな農場の雰囲気だ。2回が寝室とリビングで、ここは靴を脱いであがる。大井さん夫妻がセンスがよくスマートだから家もそうなのだろう。でも就農して、ここまでくるにはきっと色んな事をひとつひとつ乗り越えてきたに違いない。トマトジュースは今まで飲んだトマトジュースの中で一番おいしかった。

 6年前、中富良野の大越さん宅で⒗ミリフィルムでラッシュ上映をした時、タカエさんは見に来てくれたそうだ。それを聞いてびっくりした。色んなところで人はつながっていくものだなあと。

 暗くなり、出店者の人たちが店じまいを始め、私たちは上映の準備にかかった。アンプがなく、スピーカーに音量調節がついてなかったので、DVカムでの上映ができなくなり、万が一のためのバックアップで持ってきたDVD上映に切り替えた。ハプニングがあったが、画と音を調整し、無事上映を開始した。

 40人ほどのお客さんで会場は満員になった。みんな毛布や座布団を持参していた。これだけ人が入ると、寒さの心配はまったくなかった。

  藤原さんが上映前にあいさつをした。仲間の協力で一年越しで実現できたこと、そして自分の役割はこの映画をつなぐことだと彼は言った。次に上映をやる人がいたら喜んで手伝うと。私は感動した。自分の映画をこんな風に思ってくれる人がいるなんて。「空想の森」はつくったスタッフ、登場してくれた人たち、協力してくれた人たち、そして上映してくれた人たちの映画になっている。

 納屋での上映は「空想の森」にぴったりだった。みんなすごく集中して観ているのがわかった。何より嬉しかったのは、笑いどころは100パーセント笑っていた。宮下夫婦のやりとりなんかは、みんなゲラゲラ笑っていた。上映後、大きな拍手をいただいた。うれしいやら恥ずかしいやら。  

二人ほど自主上映をやってみたいという人がいたので、資料一式を渡した。素晴らしい上映会だった。

 お客さんを見送った後、持ち寄った食べ物で交流会が始まった。いなり寿司、柿のようなきれいなオレンジ色のカボチャ、鶏肉の燻製(とりのす農園)、トマトスープ(パラダイスファーム)、パン、鹿肉の燻製などなど。

 メンバーは最近この辺りに移住してきた郷間さんご夫妻、神戸から移住してきた女性、農家の男性、旭川の女性、大井さん、藤原さん、私。色々な話をして本当に楽しかったし、勇気づけられた。こうやって話ができる人たちがここにもいるのだ。

  藤原さんはお客さんたちから、「よかったよ。ありがとう。」と言われて本当に嬉しそうだった。そしておいしそうにワインを飲んでいた。この上映会に人をよぶために奔走し、すばらしい上映会になり嬉しくてたまらないのだろう。そしてこの上映会をきっかけに新たな人のつながりができた。ここからまた何かが始まっていきそうだ。藤原さんはどうやら人をつなげていく役割になっていきそうだ。

  この晩は大井さんの2階の部屋に泊めていただき快適に眠った。

2010年3月7日。

 

 朝食をごちそうになり、大井さん一家と別れた。
  藤原さんの車について、20分ほど離れた当麻町のとりのす農場に向かった。藤原さんも7、8年ほど前に、内地からここに入植した。入植した頃は、「困ったら茶碗もって来いよ。」とまわりの農家の人たちに言われ、とても嬉しかったそうだ。そうやってまわりの人たちに気にかけてもらい、助けられてここまでやってきたそうだ。

  現在は、鶏を250羽飼い、野菜、米などをつくっている。ハウスの中には青々としたほうれん草が。今の時期のほうれん草は甘くておいしい。

 
とりのす農場にて。藤原さん。

  藤原さん手製のかんじきをはいて、散歩がてら農場を案内してもらった。もともと水田だったところを畑にした。何箇所か共働学舎の宮嶋さんに炭を埋めてもらったそうだ。2年後くらいに水はけがよくなったそうだ。畑の端まで歩くと、きれいな川が流れていた。

  母屋の脇の小屋で鶏の餌の調合をしている。その隣にも家があり、いづれはここでプリンをつくる作業場しようと考えているそうだ。 

 そして昼過ぎ、私はとりのす農場を後にした。今回も最高の上映会だった。

旅する映画 その53 滋賀会館シネマホール物語 part.5

ロビーにて。左から瀬藤さん、原田さん、坪山さん、私。

2010年2月28日。
  
私たち、やったぜ!滋賀会館に花が咲いた。最終日、70人のお客さんが朝から劇場に足を運んでくれた。活気があふれていた。
 共働学舎のチーズは連日飛ぶように売れ、足りなかったくらい。全て完売した。
 1週間のトータルでなんと230人の人たちが観に来てくれた。なんと京都シネマの150人を大きくうわまわった。「快挙です!」と劇場のスタッフの野田さんが言った。

   劇場スタッフと、今まで「空想の森」を上映してくれた前田さん(余呉の野良師)、原田さん(大津)、岩田さん(ブルーベリーフィールズ紀伊國屋)、奥田さん(彦根上映委員会)、そして彼らの仲間たちが一丸となってやった結果だ。連日のイベントで色々あり、毎日がドラマだった。どんどんチームワークがよくなり、最後、みんながいい顔をしていて、本当にやってよかった。私もやることは全てやったから、この結果が嬉しくてたまらない。
 

お米の食べくらべの様子
 
 上映後のイベント・米の食べ比べも40人以上の人たちが参加して大盛況だった。初日にやった反省点を活かして、最終日の今日はスタッフ一人一人が役割を理解し協力しながらスムーズに準備がすすんでいた。
 仁張将太さん。(くさつパイオニアファーム)

  そして、どんな思いでどんな風につくっているのか、生産者の前田さん、仁張さんの話はとても面白く、参加者は身を乗り出して聞いていた。
お米をどう選んだらいいのですかという参加者からの質問に、仁張さんは、どんな人がどんな風につくっているかを見るのがいいと思うと答えた。いい答えだなあと思った。

前田壮一郎さん。(余呉)
 
 作った人と食べる人が顔を合わせる場をつくることも、米作りの一部だと思うと言った前田さんの言葉も印象に残る。参加者と生産者の自由なやりとりが楽しかった。
   米作りが面白くて仕方がないのがにじみ出る若い仁張さんの話は人をひきつけていたし、かまどで米を炊き、それをにぎった感触を生き生きと話す劇場スタッフなど、それぞれの話は、感動と実感にあふれていて人の心にひびいた。
 仁張さんや前田さんに共感するところが多かった。そして私は、みんなで共有している今をしっかり体に感じようと思った。
   岩田さんもとても楽しそうだった。米の食べ比べイベントのため、朝6時から、かまどで米を5升たき、おにぎりをにぎるのに、生産者の前田さん、仁張さん、劇場スタッフの長尾さんなどなど、若者たちがこぞって手伝いにきてくれて、それがものすごく楽しかったようだ。


映画は見られなかったが、たまたま米の食べくらべに参加した北海道石狩で農業を営むはるきちさん。

 交流会では自己紹介で、みんなが今自分のやっていること、そしてこれからやりたいことなどを語り、素晴らしい時間だった。
   映画を観て、お米を食べ、その作り手たちと参加者たちが未来の希望を語り合うことができたこの会。大げさかもしれないが、私が今までやってきたことは、全てここにつながっていたのだと感じた。これこそ、私がやりたかったことだと。
 そして、次は違う場所や形で、またいっしょにやっていこうねと言い合って、それぞれのフィールドに戻って行った。なんてすごいことでしょう。
   滋賀会館がこのような場になりうると私たちは証明できたことをとても嬉しく思った。これから滋賀会館が3月に閉鎖になり、その後どうなるかわからないが、ここでこれができたことは、未来につながるとても意義深いことだと思う。

左から岩田康子さん。(ブルーベリーフィールズ紀伊国屋)、私。   

 そして滋賀会館2階の文化サロンで、夜の10時までみんなで語り合った。差し入れの品々をみんなでいただいた。京都の眞理子さんからの純米吟醸酒、彦根の太田さんの手作りの鮒鮨(雌)、オープンセサミの坪山さんのチーズケーキ。奥田さんの差し入れの富田酒造の七本槍、前田さんのつくった米だけでつくった「天地の唄」(富田酒造)、小川酒造の船戸の2年寝かせた酒を前田さんの解説つきでいただいた。
 これをきっかけに、これからまた琵琶湖の周りで面白いことができそうだ。みんなで共有した時間と空間は一生忘れない。

文化サロンにて。  

  この日、北海道石狩で農業をしている青年が、偶然やってきた。はるきちオーガニックファームの小林卓也さん。彼は映画は観られなかったが、その後の、米の食べ比べ、交流会、打ち上げまで参加して、みんなと意気投合。これから滋賀の農業青年たちとの交流が始まりそうだ。

 十勝にもどると、春の雪だった。私にとっては、ああ、これからだーという心が軽やかになる雪だった。私はまだ、滋賀会館での上映の興奮と感動の余韻の中にいた。
 
 「こんな素晴らしい上映はもう二度とできないわ。」と京都で見送ってくれた奥田さんに私は言った。すると「陽子さん、それ、名古屋上映会が終わった時も言っていましたよ。彦根は滋賀会館以上の上映会にしますからまかせてください。」と、頼もしい言葉をもらった。
 作品の監督の私と、劇場スタッフと、近江応援団が一つの目標に向かって、まさしく一つになれた2010年2月28日、最終日。みんながそれぞれの役割を理解し行動し、そして来ていただいたお客さんと共に楽しみ、未来を語り合えた。こんな素晴らしいことって、そうそうあるもんじゃない。私は本当に嬉しかった。
 
 奥田さんは後で私に言った。「最終日、私は本当は飛び上がって喜びたかったんです。でもスタッフだけじゃなかったし・・・、抑えたんです。今度の自分の彦根上映会は飛び上がって喜びます。泣いてしまうかもしれんわ。」私も奥田さんと同じ気持ちだった。
 最終日、満員の劇場の一番後ろで映画を観ながら私は涙が止まらなかった。映画と関わってきた今までのことが、私の中にまさに走馬灯のように浮かんできた。そして今目の前に、こんなにも多くの人がこの映画を観に劇場に足を運んでくれて、言うことない。私はこれでいいんだと改めて思うのと同時に、私のやりたいこと・やるべきことがより明確になってきた。
 私は余呉・大津で上映会をやってもらっていることもあり、その恩返しのつもりで、これに向けて自分のできることは全力でやった。滋賀会館シネマホールでの上映は、今までの上映活動の集大成のような気がする。
 
  そして今回、映画製作の時とある意味同じ質のものを味わった。まさか、上映でこんなことを味わえるなんて。行き違いあり、笑いあり、涙あり、うまいもんあり・・・でも最終目標はみんな同じだったから、一つになれた。なんかまた一つ上の境地に来た感じだ。

旅する映画 その52 滋賀会館シネマホール物語 part.4

ロビーにて。左から原田さん、坪山さん。

2010年2月24日。
9:20に劇場へ行き、お客さんを迎えた。今日から28日まで朝10:00からの上映だ。31人のお客さん。平日の午前中でこの数はすごい。
   おばあさん三人組が後ろの方で観ていた。画面を観ながら話をしていたというより、ついつい言葉が出てしまっているという感じで、それが上映の雰囲気を柔らかく温かいものにしていた。ずっといっしょに観ていたかった。今回音は大きすぎず、小さすぎずばっちりだった。

 11:30。原田さんと坪山さんがやってくる。原田さんは天然酵母パン、坪山さんはランチボックスをつくって27日まで連日ロビーで販売する。劇場側では共働学舎からチーズを取り寄せて販売もする。映画を見た後はお昼だ。おなかもすくし、お客さんにきっと喜んでもらえるに違いない。
 天然酵母パンは七本槍(富田酒造)の酒かす入りでプレーンとくるみの2種類。ランチボックスはキッシュ、黒豆、厚揚げカレー風味、なますなどのおかず8種入り。おかずは日替わり。

ランチボックス。日替わりでいつも2種類用意してくれた。
  
   チーズはレラ・へ・ミンタル、コバンだった。しかしチーズが少なすぎた。そして野田さんはどんな風にチーズを提供するか想像できなかったようだ。チーズを扱った経験がない人には無理もない。私は映画製作中に共働学舎のミンタルでアルバイトをしていてチーズを扱った経験があった。なんとかしようと考えた。まだ4日間あるのですぐに追加注文をした。そしてサンドイッチにするのは無理だったので、原田君のパンをスライスし、その上にチーズをのせて一皿300円で販売するのと、モノが来たらそのままチーズを売ることにした。坪山さん、原田君、野田さんにチーズの切り方など教えてサンプルをつくり、その場にいたスタッフみんなで試食をした。パンもチーズもおいしいと好評だった。

原田君が焼いたパンとチーズ盛り合わせ。 

上映後、案の定お客さんは一直線に食べ物の方へ。私もいっしょに売った。あっという間に全てが売り切れた。坪山さんと原田君も手ごたえを感じたようだ。そして明日の仕込みのため早々に帰っていった。
   夕方、奥田さんに確保してもらっていたランチボックスを食べた。酸味、甘み、塩気、色んな歯ごたえがあり、バランスがよく、本当においしかった。疲れた体に力を与えてくれた。

 

2010年2月25日。
 
滋賀会館では谷と言われる木曜日。26人のお客さんを迎えた。その中に浜大津の朝市の末富さんご夫妻が娘さんといっしょに来てくれた。

  11:30。原田君、坪山さんが到着。早速売店の準備を始める。今日はレラ、コバン、さくらの3種のチーズを売る。坪山さんはオーガニックの赤ワインも持ってきた。盛り合わせとセットでも売るのだ。試飲したがおいしいワインだった。

  奥田さんは模造紙に上映期間張り出すものを製作していた。前田さんの「僕は滋賀会館が大好きです」の文章を張り、「大津っていいとこやん」と題し、滋賀会館の「空想の森」初日の様子の写真や、浜大津の朝市の写真を貼ったりしていた。そして奥田さんは滋賀県民として滋賀会館を閉鎖し使わなくなることをもったいないという意見も盛り込んだ。

  上映後、また食べ物に人が殺到。完売した。チーズってすごい人気なのだなあと改めて感じた。上映後に、何人かのお客さんとしばらく話をした。その中に、この劇場は音も画もいいですねえという人がいたので、劇場スタッフの瀬藤さんに直接話をふった。瀬藤さんも嬉しそうだった。

  奥田さんのつくった張り紙を見た若い女性が、滋賀会館、そしてシネマホールが閉鎖になることを初めて知ったと話しかけてきた。自分が小さい頃、ここの大ホールで映画を見たことがあったが、その後一度も足を運んでおらず、今日来たら来月閉鎖と知り、こんないい映画館があったなんて知らなかった。閉鎖しないで欲しいと話していたので、直接瀬藤さんに言ってくださいと話を向けた。瀬藤さんは嬉しそうだったが、どうしようもならないことも彼女に説明していた。

お客さんと話す瀬藤さん。

 私は地元の人に、映画の上映を通して滋賀会館のことを少しでも知ってもらえて、そしてこうやって話をすることができてよかったなあと思った。今日もいい上映だった。

17:00。宿に戻り遅いランチ。坪山さんのランチボックスは今日もおいしい。そして駅のイタリアレストランでワインを飲んでいる奥田さんからメールがきたので、まだ今日の上映の興奮さめやらない私も合流した。ワインと野菜の前菜を食べながら二人で乾杯した。

 
2010年2月26日。
  
今日は14人のお客さんだった。余呉上映の時にお会いした太田さんが、手作りの鮒鮨を差し入れてくれた。大津上映の時にお世話になった伊藤さんも来てくれて嬉しかった。
  私は疲れのピークだったので、この日は早く帰って宿で休むことにした。
 

2010年2月27日。
  
今日は37人のお客さんを迎えた。ほっとした。この日は上映時間とバンクーバーオリンピック女子のフリーの放映時間が重なるのにもかかわらず、劇場にいらしてくれて本当にありがたい気持ちでいっぱいになる。
  
   映像と音のチェックを終えてロビーに出た私に、瀬藤さんが携帯を私に見せた。浅田真央さんのフリーの演技が映っていた。瀬藤さんといっしょに真央ちゃんの演技を見た。鐘という荘厳な曲にのって、今の自分の全てを出そうとする真央ちゃんの気迫・凄みが小さな画面から伝わってきた。もっと素晴らしい演技をしたいという志、あきらめずに努力し挑戦し続けたものがすべてあの演技に出ていたと思う。とても感動した。
   4年前のトリノオリンピックの時、私は手術をして実家で療養中だった。動けなかったので連日オリンピックを見ていた。撮影が終わったばかりの段階で、まだどう編集するのかも全く決まっていなくて、先の不安でいっぱいの時だった。その時、女子フィギュアスケートの荒川静香さんの演技を見てとても感動し、どれだけ勇気をもらったことか。
 
  あれから4年。私は納得いくまで編集・仕上げをして映画を完成させ、そしてその映画を全国で上映して歩いている。その時その時はいつも必死だからよくわからないが、振り返ると、よく完成させたなあ。そして今までよく上映を続けてこられたなあと感慨深い気持ちになる。

 「今日は市場をやっていますよ」と瀬藤さんが私に言った。1階の外に出てみると、近郊の農家の人たちがつくった野菜を売りにきていた。焼き芋も売っていた。
  県庁では映画の撮影中とのことでなにやら人がたくさんいた。堤真一さんや岡田准一さんも来ているらしい。
  「がんばっているねえ。観たお客さんがいい映画だったってみんな言っていたよ。チーズもおいしかったって。」と文化サロンの景子さんに声をかけられた。1月に宣伝に来た時、取材などで文化サロンを使わせてもらった。その時お話したので私の顔を憶えてくれていた。

左が文化サロンの景子さん。 

 そして野菜を売っている農家の人たちに、私の映画を宣伝してくれた。「志はみんな同じなんだから。」と景子さんは言った。私はすっかり嬉しくなった。そういえば、余裕がなくて今回まだ文化サロンに顔を出していなかったなあと思い、チーズの試食を持って文化サロンに行った。 
 
明日はいよいよ最終日だ。


文化サロンにて

旅する映画 その51 滋賀会館シネマホール物語 part.3


浜大津・朝市の出店者の方たち

2010年2月21日。
浜大津・こだわり朝市にて
 
午前中、浜大津の朝市へ行く。おいいしいものがいっぱいあり、多くの人でにぎわっていて、私は朝からテンションが上がった。素晴らしい朝市だった。出店者の人たち・お客さんもみんないい顔をしていた。会話を楽しみながら買い物ができるので、とても活気があるのだ。私はこういうの大好き。肉まん、鶏肉のだんご汁、クッキー、岩魚の塩焼き、ふりかけ、パン、佃煮、日本酒、ワインなどなど、こだわりの品々。1周ぐるっとお店を見てまわるだけでも結構時間がかかる。買ったお店で、映画の話をしてチラシを渡した。みんな興味を持ってくれて、話もはずんだ。

  大津ってほんとにうまいものを誠実につくっている人がたくさんいるのだなあと思った。このこだわりの人たちを集めた末富さん夫妻はすごいと思う。朝市を始めたばかりの頃は出店も少なく、お客さんも少なかったそうだ。しかし今ではこの朝市に出店することはステータスになるほどの人気。そしてすごい人数のお客さんが月に一回、この朝市めがけてやってくるようになった。


小川酒店

 この日、小川酒店が出店していた。試飲ができるのもあり、すごい人気。常に人だかりだった。蔵元も来ていて、お客さんに酒をつぎ、解説してくれる。とても素敵な人だった。あっという間に酒が売り切れていき、私が行った頃は、新種が2種類しか残っていなかった。


左が蔵元

 もう一つ人気の店は、沖島のわかさぎのてんぷらだった。琵琶湖には4つ島がある。沖島は唯一人が住んでいる島。その島の人たちが、とれたてのわかさぎをこの場で天ぷらにしている。これにも長い行列ができる。てんぷらの他には新鮮な刺身なども人気だった。

 奥田さんも朝市に来ていて、彼女も満喫していた。彼女が2年寝かせた酒(小川酒造)の小さい瓶を買っていたので、私はそれをいただきながら、わかさぎのてんぷらなど、買ってきたもので、朝ごはんを食べた。朝からいい気分だった。

  午後。ブルーベリーフィールズ紀伊国屋の岩田さんとの待ち合わせの場所・びわ湖ホテルに向かう。福井県のおけら牧場の山崎洋子さんもいらしていた。とてもエネルギッシュで魅力的な女性だった。びわ湖を眺めながら、食べながら飲みながら、3人で色んな話をした。

  日本の農業をどうにかしなくてはという話が中心だった。 というと堅い感じだが、そうでなくてすごく面白かった。刺激を受けた。私はもっと話をききたかったし、話をしたかった。

  岩田さんと山崎さんとお話して、色々と感じるところがあった。自分のフィールドを持つこと。これが大事なことなのだと改めて思った。私は映画というフィールドを持てたことで、他のフィールドとつながっていくことができるようになった。また一方で、フィールドが違うだけで、実は目指しているところは大方同じようなことなのかもしれないと最近感じている。
  人は生まれた瞬間から背負っているものがあると思う。時代、国、家族などその環境はみんな違う。そのどうしようも変えられない中で、どう生きていくのかが大事なことだと思う。そんな中で、与えられた命には、きっとひとつひとつ違う役割があるのではないかと私は思うようになった。人間においては、それを探し続けることが生きていくことなのかもしれない。そしてその過程で、実に多くの人たちの世話になる。そのお返しを直接その人には返せないかもしれない。私自身は私の時間をかけてやっていること・映画を通して返していきたいと思っている。私の国日本、そして世界が、争い・偏見のない、違いを受け入れ、生き物が気分よく生きていける世界になるよう、自分のできることをやっていきたいと改めて思った。

 

2010年2月23日。
 6月12・13日に予定されている彦根上映会会場の下見・花しょうぶ通り商店街の方にご挨拶に彦根へ向かう。彦根上映会主催者・奥田さんがこの日の予定を組んでくれた。

 お昼に近江八幡駅で待ち合わせた。そして男女参画センター内にある和茶庵へ。4人の女性がタッグを組み、地元でとれたものを提供するチャレンジショップのようなお店だ。もうすぐその期間が終了する。

 奥田さんがたまたま用事で男女参画センターに行った時にお昼を食べたお店で、すっかりファンになり、今回の滋賀会館での上映も彼女たちに協力をあおいだのだった。奥田さんは今日のお昼ご飯をここに予約してくれたのだ。


左から奥村さん、鳥谷さん、大谷さん 

 たくさんのお客さんでにぎわっていた。私たちはランチを食べた。「あさつゆ」という緑茶も注文した。私はお茶がとても好きなのでこういう店は嬉しい。しかも生産者の大谷さんにお茶のことも聞ける。おいしいお昼をいただいた。帰りがけに奥村さん、大谷さん、鳥谷さんに19日のお礼を言い、少しお話もできてよかった。

 15:00過ぎ、彦根の花しょうぶ通り商店街へ。そこは風情ある魅力的な商店街だった。細い道の両側に昔からの店が並んでいる。歩いているだけでもなんか楽しい。またテンションが上がってきた。

戦国丸

 商店街のほぼ中央の戦国丸という寄り合い場所へ。ここは昔銭湯だったところで、今は街の駅になっている。戦国グッズを売っていたり、飲み物を出したり、商店街の人たちが集まって会議をしたりもする。ここで小杉さんとお会いした。小杉さんはこの商店街で店を営み、街の駅の駅長も務め、この商店街を引っ張っていっている方だ。とばや旅館の和田さん、目加田さんもいっしょにお話をした。

小杉さん 

 今年11回目を迎える花しょうぶ通り商店街の年に一回のお祭り・アートフェスタ勝負市で、空想の森上映会もいっしょにやってもらえることはとても嬉しい。奥田さんが一番やりたかった形で上映ができることが本当に素晴らしい。

 そして会場を見に行った。花しょうぶ通り商店街のすぐ近くにある社会福祉法人千歳会。デイサービスの建物の2階の部屋が上映会場になる。ここの高塚さんが会場を見せてくれた。普段は部屋を仕切って2部屋にして使用している。上映会では仕切りを取り外し、机も運び出してもらうことにした。そうすると50人くらいは入れるだろう。音がやけに反響する感じだが、人が入ればある程度は吸収されるはず。


村川商店

 それからまた花しょうぶ通り商店街の村川商店へ向かった。先ほど行った戦国丸の向かいだ。ここはタバコ屋さんと自然食品などを扱っているお店。日本中を歩いている息子のアコさんが、今ちょうど帰ってきているとのこと。奥田さんは彦根上映の時、このお宅に私を泊めてもらえたらと考えている。

 お母さんとアコさんが温かく迎えてくれた。そしてお母さんの出してくれる料理を食べながら、色々と話をした。アコさんは全国を自転車や徒歩で回り、地球環境や平和をテーマにした紙芝居をしたりしている。柔らかい感じの人でとても面白く話がはずんだ。

アコさんとお母さん 

 奥田さんが予約していてくれたオイルマッサージを30分ほど受けてリラックスした後、日本料理のお店へ夕食を食べに向かった。ここで清水育美さんという若い女性と3人でおいしい料理を食べた。彼女は、「4分の一の奇跡」という映画の自主上映に関わった人で「空想の森」にも興味があり、奥田さんが食事に誘ったのだった。私は大好きな富田酒造の七本槍を飲みながら、料理を味わった。人のつながりで上映が続き、また人がつなっがっていくことをしみじみ実感した。

結構過密スケジュールの一日だったが、色々な人に出会えてよかった。明日から後半の上映が始まる。ロビーでチーズの販売、オープンセサミのランチボックス、原田さんのパンの販売も始まる。私は心地よい疲れを感じながらワクワクしていた。

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