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旅する映画 その38 2009年8月 帯広にて

夏の陽が大地に降り注ぎ、風が緑を揺らしている。

去年の夏、東京のポレポレ東中野で『空想の森』を公開した。

それから私は、映画といっしょに日本を旅している。

つくった映画を自分で人々に届けたい。

そしてその場に身を置き、いっしょに観たいと私は思っている。

映画はライブだ。

観る人・場所が変われば、同じ映画でも前に観た時と違ってみえる。

もっと言えば、同じ劇場でも、毎日観たら一回とて同じに見えたことはなかった。

この一年、5箇所の劇場、5つの映画祭で上映をしてきた。

そこで観た人の中から、「自分の町でも上映会をやりたい。」という人が何人も現れた。

群馬、滋賀、名古屋、京都などなど。今まで6箇所の自主上映をしてきた。

そのどれもが、私にとって宝物のような時間と空間だ。

映画と出会ってから、私自身が初めて映画に関わったのがドキュメンタリー映画『阿賀に生きる』の自主上映会。

仲間4人で準備し、大勢の人たちを巻き込んでいった。当日、撮影の小林茂さんもお招きし、250人を集客した。

この日のことを、私は一生忘れないだろう。

たぶんこれが私の原点だ。

自主上映会というのは、つくり手の私と、この映画を人に観てもらいたいという主催者の人とのコラボレーションであり、やりたいことを如何様にもできる表現の場であると私は考えている。

どの上映会も主催者の個性が出て面白い。 自主上映を申し出た人のほとんどが初めての経験だ。

だからみんな会場のこと、機材のこと、宣伝のこと、スタッフのことそしてお金のことで頭を悩ませる。一人ではできない。

だから仲間を探す。人を巻き込んでいく。色んな穴がボコボコ開いているから、そこを埋めようとしてくれる人が現れたりする。

同じ地域に暮らしながら知らなかった人たちとの交流がはじまる。

様々な問題をみんなで乗り越え、上映会を成功させた時の喜びは言葉では表せない。

後から振り返ると、準備の過程がスリリングでドラマがあり面白かったりする。

『空想の森』を観て何かを感じ、共鳴してくれただけでも嬉しいのに、更に、もっと多くの人に観てもらいたいから、自分の町で自主上映をやろうじゃないかという人が全国にいることがわかってきた。

映画の力を私は実感するようになった。

映画は多くの人との出会いをもたらしてくれる。

そして日本各地の人の暮らしや仕事に少しだけ触れさせてもらえる。

そこから色々な刺激を受ける。

暮らしている土地は違うが、同じ時代を生き、面白さや喜びを映画を通して共有できることが嬉しい。

目には見えない輪が増えてきている。

これからも空想の森の旅は続く。

喜茂別町Webサイト

2009年10月4日 喜茂別町Webサイト 2009年10月1日、喜茂別町での上映会の様子です。 主催していただいたのは、喜茂別町在住の三田健司さんです。 記事を見る

北海道・喜茂別町農村環境改善センターにて 2009年10月1日

「空想の森」感想いろいろ 2009年10月1日 北海道・喜茂別町農村環境改善センターにて 上映してくれた人 : 三田健司さん ありがとうございました!

聡美さん夫婦の迷い続ける姿と宮下さん夫婦のあっけらかんとした姿が、その年齢特有の姿をあらわしているようでおもしろかった。 (女性・31歳・ソーシャルワーカー)

本当に言葉で表わしにくい映画でした。また、新たに自分が生まれた北海道や地元が好きになりました。親近感が沸きました。いつ見ても、何年先に見ても、思い出になりそうです。続編など楽しみにしています。ありがとうございました。 (男性・29歳・パン屋)

とても、とても感動しました。若いご夫婦の山田さん、赤ちゃんをおんぶして懸命に農業されている姿は、本当に人間としての美しさとして強く心に伝わりました。宮下さんの生き方にも深く感動しました。とても強いエネルギーが双方にあるのでしょうね。大地と生きる姿。もっと、もっと、たくさんの人達に観てもらえますよう心から願っています。素晴らしいドキュメント、本当にありがとうございました。バックミュージックすごく、すごくステキでした。(女性・57歳・酪農業)

その場にいるような空気を感じました。とても暖かい気持ちになりました。ありがとうございます。 (男性・28歳・農家手伝い)

「一生懸命生きる!!」をつくづく感じました。そうして「今の生活」がなくなったら、とっても、とっても、とってもいたましい。勿体ない。大切にしよう!!と思います。山田家のあのメンコイ=とってもかわいいあかちゃん・・・あんよ(歩ける)出来る様になりましたか?「ひろーい畑」をしっかりとあんよしている様子が目に浮かびます。ごあいさつの中に「おばんでございます」が出てきて・・・とても嬉しかったです。ありがとう!!これは方言で、こんばんはです。もう若い方は使いませんが私達は随分使いましたが。 (72歳)

「子供は育てなきゃいけない」とプレッシャーの様に感じていましたが、畑の聡美さんとあかりちゃんを見て、「一緒に生きていく」ことが大切なんだなと思いました。私も仲間が好きです。 (女性・26歳・事務)

東京出身の私が、畑の中の一軒家を借りて宿を始めて19年になりました。うちの朝食はサラダです。バーはあちらですと畑を指さし、畑からとって食べてもらうなんていうのが理想でしたが、未だ実現していません。都会では絶対に味わえないぜいたくは畑でとれたものを食べることだと思っています。「食」は大切ですね。 (男性・48歳・自営&会社員)

なつかしかったです。つづきみたいです。メンバーかわるとまたおもしろくなります。また会いたい。私も何回みてもあきないです。 (女性・30歳)

空想の森を見て、最初から自然に溶け込むことができました。胸が一杯になり、沢山の力をいただきました。新得共働学舎の人々が個々に皆と力を合わせ頑張っている姿が伝わってきました。毎日、自分の生活に追われ、ともすれば忘れがちな一番大切な事を想い出させてくれた映画だと感じました。本当にありがとうございます。これからもずっと頑張って行って欲しいと願わずにはいられません。音楽もとても良かったと思います。田代陽子監督さま、お体を大切に、ありがとうございました。 (女性)

お金を出して、おいしくない野菜を食べること、本当につらくなります。でも、そんなこと言ったら感謝足りないかな?次女(中3)がこの秋農業実習で学舎にお世話になったばかりです。見ることができてよかった。 (女性・46歳・教諭)

新得は元気ですね。大滝・喜茂別と似た空気を感じました。次作を楽しみにしています。 (男性・34歳・農業研修中)

見て行くうちに自分の中で感情が変化して行く映画かと思いました。 (女性・72歳)

いろいろと土の臭いや人間の等身大になり見ることができました。一度新得のあつい部分をのぞきたかったので、よい機会になりました。 (女性・33歳・販売)

プレシャス 2009年10月号 田代監督インタビュー

2009年10月1日 Precious(プレシャス)10月号 巻頭ページインタビュー インタビュアー:葛西麻衣子 撮影:渋谷文廣

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