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新作撮影報告 その107  わっか祭 中富良野 その1

中富良野へ向かう道中の月がきれいだった。

2012年3月10日。

函館から中富良野へ移動。

中富良野のわっか祭という映画祭が3月9日から開催されている。

今回が第一回目。

有志で立ち上げた映画祭だ。

嬉しいことに、その最終日に「空想の森」が上映されることになった。

 

昼前に函館を出発。

中富良野は遠かった。

会場の「ぬくもり庵」に到着したのは19:00近かった。

上映会場

昔の木造の小学校の建物で、会場は体育館だったようだ。

中に入ると上映中で、結構たくさんのお客さんが観ていた。

新得のいんであん一家の姿もあった。

とても温かい雰囲気の会場だった。

わっか祭を立ち上げた矢島弘子さん

 

上映が終わると主催者の矢嶋さんがご挨拶。

お客さんに映画の感想などを聞いたりした後、私を紹介してくれた。

私はご挨拶をして、今撮影している映画のことなどを少し話した。

 

そして、ぬくもり庵のすぐ横の昔、教員住宅だった矢嶋さんのお宅に入った。

映画祭の期間中、ここがスタッフの宿となっている。

私も今晩お世話になる。

フランス人のティボ、東京から土日を利用して映画祭を手伝いに来た高校3年生のダリと舜。

そして、まかない料理担当の八木橋さんが今日のメンバーだ。

 

八木橋さんとティボが夕飯を作っていた。

彼は料理も大好きで、カレーをつくっていた。

ダリ

高校生のダリと舜はなかなか面白い子だった。

ダリが年末に富良野で矢嶋さんにあったのが運のつき。

友人の舜を誘い、映画祭のスタッフを手伝いに、汽車で東京からやってきた。

すごい行動力だ。

 

ダリは高校で写真部に入っている。

いつもキャメラを首からぶらさげていた。

映画や写真の話などをして、とても面白かった。

若者たちがいて何だか活気があって、私は疲れも吹き飛んだ。

矢嶋さんも初めての映画祭の張りつめた中だが、何だかとても楽しそうだった。

みんなで食べる食事はおいしかった。

新作撮影報告 その106  第5回大間原発訴訟口頭弁論

前菜。黄色いのが山田農場のチーズ・トム。

2012年3月8日。

野村さん、桜ちゃんと3人でランチに行く。

前から行きたかったコルツというレストランへ。

前菜盛り合わせが目にも美しく、そしておいしかった。

ワインをいただけないのが残念。

左から野村さん、さくらちゃん。

スタッフの女性が、ひとつひとつ、料理を説明してくれた。

その中に山田農場のトムというチーズがあった。

野村さんが「これをつくっているのは友人なんです」と嬉しそうに言った。

このデザートもおいしかったー!

 

デザートを食べ終わると、おもいがけずシェフが厨房から出てきた。

すると、シェフは午後から山田農場に行くとのこと。

そして「空想の森」を見たいと思っていて、まだ見ていないことなど、話がはずんだ。

 

午後から弁護士会館で弁護団会議に参加。

今回の意見陳述も2名。

その一人に小松幸子さんがいた。

小松さんは4人の子どもを持つお母さん。

福島県の鮫川村から函館に自主避難をしている人だ。お連れ合いは歯医者さんなので村に残り仕事をしている。

彼女の陳述は、胸にせまるものがあった。

 

会議の後、野村さんが小松さんと話し込んでいて、私を呼んだ。

そして明日、裁判の前に野村さん宅で小松さんの話を聞くことになった。

小松さんは話したいことがたくさんありそうだった。

私も話を聞きたかった。

野村さんは福島の人たちの思いを、何かの形で発信していきたいという思いを強くしたようだった。

 

 

 

2012年3月9日。

午前中、野村宅に小松さんがやってきた。

撮影をさせてもらいながら話をうかがった。

 

鮫川村でどんな暮らしをしてきたか、3月11日のこと、どうやって避難してきたか、原発のこと、放射能のこと、家族の今の状況などを話してくれた。

小松さんは言いたいこと・話したいことを、私と野村さんにありのまま話せていることがとても嬉しかったようだった。

私と野村さんもそれがとても嬉しかった。

小松さんと出会えてよかったと思った。

私たちも話したいことを話した。

小松さんがすっきりした気持ちで意見陳述ができたらいいなと私は思った。

 

 

 

そして私たちは裁判所へ向かった。

私にとって4回目の裁判。

[…]

新作撮影報告 その105 ベイ子の物語  山田農場

ベイ子

 

今回山田農場に滞在していて、とても感動したことがあった。

今思い出したので記します。

 

山田農所には2頭の牛がいる。

ベイ子とメイ。

ベイ子は圭介さんが前に勤めていた新得共働学舎から連れて来た。

山田農場の初めての牛で、圭介さんとあゆみさんと苦楽を共にしてきた。

 

メイ

そしてベイ子の娘のメイは、山田農場で生まれて育った牛。

去年の春、無事に初めての子どもを産んだ。

 

当初、山田農場は牛をメインでチーズをつくっていこうとしていた。

その環境が整うまで、扱いやすいヤギを飼い、チーズをつくることにした。

そのヤギのチーズがとてもおいしくできるようになりお客さんもついた。

 

今後のことを考えると、大きな牛を飼ってたくさんのエネルギーを使うより、人間と同じくらいの大きさのヤギで農場をやっていこうと、

圭介さんとあゆみちゃんは考えるようになった。

 

メイはこの農場で生まれた牛なので、最後まで面倒見ようという心づもりをしていた。

そしてこの春、圭介さんとあゆみちゃんは、ついにベイ子を売る決心をしていたのだった。

 

牛を売る時、種をつけていないと高く売れない。

圭介さんたちもベイ子に種つけをしているものの、なかなか種がつかない。

そんなベイ子の頭をなぜながら、圭介さんは言ったそうだ。

「お前、最後までここにいるかー?」

すると間もなく種が付いた。

 

「ベイ子、ここにいたかったんだね。」

ということで、ベイ子は最後まで山田農場にいることになった。

「きっと長いぞー。のんびりしてるもんなー。」

と圭介さんは嬉しそうに言った。

 

 

ベイ子はここにいたかったんだ。

だから妊娠しなかった。

そして圭介さんとあゆみちゃんも、本当はベイ子を手放したくなかったのだ。

山田農場にとっても牛はもちろん経済動物だけど、それだけではない。

こういう関係もあるんだなあ。

 

「ベイ子、よかったねー!」

もぐもぐエサを食べるベイ子に私は声をかけた。

 

[…]

新作撮影報告 その104 再びのハル小屋上映会

ハル小屋

 

 

2012年3月7日。

聡美さんも5時ころ起きて家に帰っていた。

親方とおかみさんも、もう出かけていた。

休みの日も朝早くから行動するのだなあ。

 

親方宅の居間からの眺め

 

残った野村さん、石川さん、私。

洗い物など片付けて、昨晩の残り物で朝食。

コーヒーは私が落とす。

 

親方の家は空間が広くてほんと気持ちがいい。

今回の上映会を企画してくれた野村さん、ハルエさん、石川さん。

今日は午後から「空想の森」の上映会。

野村さんたちが企画してくれた。

 

私は早めに、ハル小屋へ向かった。

ここもすごい雪、雪、雪。

しかもズブズブ。

私の四駆の車でもやっとという感じだった。

 

このひどい道路状況で果たして人は来てくれるのだろうかと心配になる。

 

上映会場を提供してくれたハル枝さんはいつものように元気だった。

ハル小屋での上映は2回目。

中にに入ると、もう上映機材はセットされており、スクリーンが前より大きなものになっていた。

こたつも用意されていてなかなかいい雰囲気になっていた。

私は早速本篇DVDのチェックをした。

野村さんと石川さんもやってきて、こたつでお昼ご飯をいただいた。

 

そしてボチボチお客さんがやってきた。

あゆみちゃんもハルサクを連れてやってきて、10人ほどの人たちが来てくれた。

子どもを連れて来た人も何人かいた。

この道路状況で来ていただいてありがたかった。

 

上映は、はじめは何事もなかったが、30分くらいたって、映像が止まったりするようになった。

それでも何とか進んだが、相性が悪いのかと思い、後半から違うDVDに変えて上映してみたが、こちらも時々映像が止まったりした。

それがほんとに申しわけなかった。

DVDの場合は、事前に上映する機材で全編再生して確認する必要があると思った。

後で他のプレーヤーで同じDVDを上映したら何も問題がなかった。

やはりプレーヤーとの相性が悪かったようだ。

[…]

新作撮影報告 その103 山田農場 誕生の春 その2

 

 

2012年3月6日。

早朝。

搾乳が始まった気配。

撮りたい。

と思ったが、体を休めた方がいいと思い直し、また布団をかぶる。

メイ。去年私はメイの初産に立ち会った。

 

今日は圭介さん、あゆみさんのインタビュー撮影と、夜はこなひき小屋の親方宅で親しい人たちで「空想の森」上映会という予定。

 

朝起きて、昨日生まれた子ヤギを見行くと、元気にお母さんといっしょにいた。

時々鳴く声がかわいい。

ボー。何をされてもされるがままのボー先生なのである。

朝ごはん。

たっぷりとチーズをいただく。

子どもたちは元気に保育所に出かけて行った。

圭介さんとあゆみさんの仕事が一段落してから、インタビューをさせてもらった。

3.11からもうすぐ1年が経とうとする今、何を思っているのか聞いてみた。

3.11で衝撃を受けた後、自分のこととして受け止め、では自分はどうありたいのか、そして何をしていけばいいのかということに真摯に向き合い、夫婦で日々話をしてきた。

その中で、自分たちの暮らしの在り方・農場の方向性がはっきりとわかってきたという。

そしてそれが誰かの役にたつのであれば、どんどん発信していこうと思うようになった。

3.11は圭介さんとあゆみさんを大きく変えた。

 

私は感動をもって圭介さんの話を聞いていた。

3.11後、たくさんの情報がとびかい、食べ物を扱う仕事をしている人にとっては、とても厳しい現状になっている。

そんな中で、圭介さんとあゆみさんは最善をつくし、動物たちと向き合い、チーズをつくり、真摯にお客さんに向き合い、常に自分たちが求める世界にベクトルを向け、共鳴する人たちとつながっていこうとしている。

圭介さんたちの話を聞いて、私は嬉しくてたまらなくなった。

そして、私も共にありたいと思った。

お昼もごちそうになり、私は夕方まで昼寝をさせてもらうことにした。

ウトウトと横になっていると、ヤギの声がした。

また生まれるのかなと思い、畜舎へ行ってみた。

すると、お母さんヤギが黄色いものをペロペロなめていた。

黄色い赤ちゃんらしき物体は動かない。

下で仕事をしている圭介さんに知らせた方がいいのかなと思いながら、じっと見ていたら、やがて白い頭がでてきた。

どうやら袋に包まれたまま出てきたようだ。

しばらくしたら動き出した。

このお母さんはかいがいしく馴れた感じでせっせと小ヤギをなめ続けていた。

 

牧草ロールをトラクターで下から運んできた圭介さんに、「生まれたよー」と叫んだ。

そして私はキャメラを準備して撮影をすることにした。

 

子ヤギとお母さん、そして圭介さんの牧草運び。

山田農場は山の中腹にあって、下の道からかなり急な傾斜を上がってこなくてはいけない。

[…]