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信級日記 冬 vol.44

令和二年12月23日

朝起きて外を見ると、雪景色。

なんて美しいのだろう。

ミラクルだ。

撮影だ!

ということで田中さんと一緒に山に行くことはできなくなった。

また次回タイミングが合ったら連れていってもらうことにした。

「田代さん、きてますね!」

と一坪くん。

朝食を手早く食べ、早速撮影へ出かけた。

柳屋さんは昨日機材を梱包して発送の準備をしていたので、

録音はなし。

ご褒美のような撮影だなあと思った。

帰る時間ギリギリまで目一杯撮影した。

一坪くんと柳屋さんを信州新町のバス停まで送った。

今回もありがとうございました!

いいクリスマスと新年をお迎えください。

また次ね♪

そして宿舎に戻り、自分の荷物を車に積み込む。

浅野さんにマルカさんの鍵を返しに行く。

てっちゃん、お世話になりありがとうございました。

良いお年を!

信級日記 冬 vol.43

令和二年12月22日

6:00 起床。晴れ。

今日はいよいよしめ縄づくりの撮影だ。

昨日水のパイプのチェック後、水が出なくなり、その後しばらくして水が出てきたものの茶色く濁っている。

ただ、前より水の勢いは良く5ミリくらいの太さで出ている。

今日、業者の人がきてくれることになっている。

ということでマルカさんの家に移動。朝食。

ご飯、味噌汁、缶詰。

しっかり片付けて戸締り。

8:20 小学校に向かって出発。

撮影隊が一番乗りだった。

三脚を立ててみんなが来るのを待つ。

8:30ころから軽トラにワラを乗せて人がやってきた。

ヒロシさん、クボタさん、そして植野くんがやってきて、校舎の中へ入っていった。

そして撮影隊も中へ入る。

窓から柔らかな冬の日差し。

ヒロシさん、クボタさん、越山さんは教える人。

太い縄は3人がかりでなっていく。

結構スルスルとしめ縄になっていく。

初心者の植野くん、浅野さんは一生懸命クボタさんやヒロシさんの手つきを見る。

とてもいい感じの雰囲気。

ヒロシさん、てっちゃんの同級生コンビで太い縄をなっていく。

なんか、小学校の頃からこういう関係性だったんだろうなあと思わさせる。

それを寄って撮る一坪くん。

「田代さん、てっちゃんとヒロシさんを撮ってる時、なんだか涙が出そうになりました。」

と一坪くん。

その気持ちわかるわ。

そういう一坪くんが私は好きだ。

自分たちの神社のしめ縄をみんなでつくる。

自分の暮らす土地への愛着、人との結びつきの大元になるんだなあ。

人の土台を育むことでもあると。

こういう行事があることはとても幸せなことだなあと思う。

クボタさんが、午後から石坂さんと一緒に罠をかけに山へ行くというので、

撮影させてもらうことにした。

しめ縄づくりを終えて、帰る時にヒロシさんと少し話す。

小学校の校舎の脇の大きな木など、何本か切った方がいい木があるなあと、

ヒロシさんは言った。

それはぜひ撮影したいので連絡をくださいとお願いした。

そしてかたつむり食堂へ。

昼ごはんを食べる。

窪田さんが来るまで、かたつむりで過ごす。

石坂さんが山から門松用の松を切ってきた。

14:30 クボタさんが罠の用意をしてやって来た。

宮平に仕掛けるそうだ。

私たちはクボタさんの車の後について出発。

日向畑から宮平へ登る道の途中、見晴らしのいいところでしばらくクボタさんの軽トラが止まって何かを見ていた。

後で来たのだが、猪がいたので見ていたそうだ。

集落の少し手前に車を止め、罠を持って山に入っていく。

撮影隊もついていく。

柳屋さんがマイクのブーム、録音の機材があるので大変そうだった。

獣道を踏まないように、罠にあまり近づかないようにと注意しながら撮影をした。

キノコを発見。

しっかり収穫。

獣の足跡がたくさんあった。

田中さんから石坂さんに電話が入った。

ヤマドリとカモを仕留めたと。

そして、さっき見た猪のことを田中さんに伝えると、

一応観にくるとのこと。

撮影隊は、田中さんの猟の方を撮影することにした。

クボタさんと石坂さんと別れ、先ほどイノシシの出たところへ下り田中さんを待った。

田中さんは車を止め、猟犬・ゴン太を出した。

ゴン太は見るからに賢そうだ。

もうイノシシの姿はなかったが、田中さんとゴン太は捜索に降りて行った。

しばらくして戻ってきた。

そしてゴン太はクンクンと鼻を上に向けている。獣の匂いを嗅ぎ取ろうとしているかのようだった。

ゴン太に導かれるように、田中さんが山へ入って行った。

撮影隊もついてゆく。ただし、山の中には入らず、道を登った。

かなり上の方まで登って行った。

結局何も見つからなかった。

こんなふうに、犬と人間が連携して猟をするのを初めて自分の目で見た。

すごい信頼関係があるんだなあと感じた。

仕留めたヤマドリとカモを見せてもらった。

ヤマドリは仕留めるのがとても難しいのだそうだ。

罠をかけ終わったクボタさんと石坂さんが下ってきた。

大きいイノシシだったんだと、田中さんに話すクボタさん。

そしてかたつむり食堂に戻った。

関口さん、イチローさん、ヒロシさん、クボタさん、石坂さんもやってきて賑やかになった。

撮影終了!

宿舎に帰ると、水が出るようになっていた。

お湯も出るようになった。

業者の人が来て直してくれたのだ。

ああ、よかった。

マルカさんの家から、炊飯器など持ちこんでいたものを

宿舎に運び、戸締りをした。

そして4人でさぎり荘へ。温泉と晩ご飯を食べに。

お風呂を出てさあ、ご飯だーと思っていたら、

なんと、お客さんが少ないので、レストランのスタッフを早めに返してしまい、食事がでませんと言われた。

もうどこもやっているお店がないので、仕方なく信州新町のセブンイレブンで買い物をした。

最後の晩餐がコンビニかー、と思っていた私に柳屋さんが

「たまにはいいじゃないですかー」

と言ってくれた。

帰り道、雨が降り出した。

そしてどんどんみぞれっぽくなっていった。

「田代さん、もしかすると、雪になって明日の朝、雪景色が撮れたりして。」

と一坪くん。

「そうだね♪」

ミラクルが起きそうな予感がした。

カップラーメンなど食べながら、最後の晩餐。

それはそれで美味しかった。

今回も充実したいい撮影だったなあ。

信級日記 冬 vol.42

令和二年12月21日

7:30 起床。朝食。座って朝食が出てくるありがたさ。

9:00 チェックアウト。

そして撮影へ出発。

天気が良くて気持ちがいい。

小学校へ。校舎、宮平、林方面のロングなど風景撮り。

メイン道路に降りる。

かたつむり食堂の脇で石坂さんがなにやらやっていた。

長い丸太も一人で移動。

お風呂の隣に休憩所をつくってと頼まれたそうだ。

今日は食堂がオープンの日。

待ちに待ったかたつむりのお昼ご飯を食べる。

お客さんから結構本格的なオーディをいただいたが、つなげ方が分からず、

柳屋さんがセッティングを頼まれた。

これでCDが聴けると純子さんは喜んでいた。

石坂さんが外でクマの爪を取っていた。

先日罠にかかって逃げて鉄砲で仕留められたクマだ。

そして宮平方面へ風景撮りに出発。

そして当信神社へ。

もう一度、しめ縄を見る。

明日、いよいよしめ縄づくりの撮影だ。

そして夕食もかたつむり食堂へ。

岩本の羽田さんはもう一杯飲んで、黄門様に間に合うように帰ったそうだ。

この日、東京から来た田中さんに出会った。

田中さんは猟犬のゴン太と一緒に時々信級に来ている。

ヤマドリ、カモ、猪などを撃つ。

そして自分で捌いて料理もする人なのだ。

田中さんのお父さんが信州新町出身で猟をしていて、

小さい頃から一緒に山に入っていたそうだ。

仕留めたカモを料理して出してくれた。

とても美味しかった。

カモの砂肝。

浅野さんもやってきて一緒に飲んだ。

浅野さんは炭盆をなんとか軌道に乗せようと頑張っている。

今、月の1/3ほど東京で単身、炭盆の販売に行っている。

まだ小さな子どもが二人の浅野家。早く出稼ぎに行かなくても済むようにしたいと考えている。

そんな浅野さんを石坂さんやヒロシさんは応援している。

植野くんもミナトを連れてやってきた。

私たちが撮影を終える翌日23日の午前中に、田中さんが、私たちを山に連れて行ってくれることになった。

楽しみだ。

その前に、明日のしめ縄づくりの撮影を頑張ろう。

信級日記 冬 vol.41

令和二年12月20日

8:30 起床。

天気は良い。

今日は柳田さんが合流する日。

てっちゃんのいびきが一晩中続き、私はあまりよく寝られなかった。

てっちゃん、飲み過ぎだわ。

居間の窓を開け換気。

朝食を食べるのにマルカさんの家へ移動。

台所に立つと、コップが落ちて割れていたり、辺りのモノが散乱散していた。

きっとネズミの仕業だ。

まずは掃除から始めなくてはいけなくなった。

グラスの破片を拾い、掃除機で床をすう。

そして、朝食の支度。

皿なども全部洗い直す。

ご飯、味噌汁、缶詰で3人で簡単に朝食。

10:30 柳屋さんを迎えに信州新町へ。

浅野さんから電話があり、関口さんの炭小屋で一緒に炭を出す作業をして、それが終わったら、炭盆用に炭をカットする作業をすると知らせてくれた。

柳屋さんを迎えに行ってから撮影に行くことにした。

「相当寒いと思って着込んできたら、そうでもなく、雪もまったくないんだね。」

と柳屋さん。

柳屋さんは南極探検隊のようないでたちだった。

私は尾澤酒蔵へ。

今、酒造りの最盛期。

お店を閉めて酒をつくっている。

お願いして、お酒を買わせていただいた。

前のロケの時にみゆきさんが選んでくれた真賞が美味しくて、今度はぜひ柳屋さんにも飲んでもらいたいと思っていたのだ。

ラベルの真賞の字は勝海舟が書いたものだそうだ。

信級へ帰る道中、今まであったことを柳屋さんに話していたら、

昼ごはんを食べようと思っていたひはら食堂を通り過ぎてしまった。

ひはら食堂へ戻る途中、前から気になっていたカフェが開いていたので

そこで食べることにした。

ここの店主の方が、石坂さんのシェーンの里親だったことがわかった。

そして植野家で、録音の機材を受け取り、一度宿舎に戻る。

柳屋さんの支度が終わり、早速3人で撮影に出かける。

関口さんの炭小屋へ行くと炭出しは終わって、

浅野さんが炭盆用の炭をのこぎりでカットしていた。

黙々と仕事をする浅野さん。

柳屋さんも加わり、3人での撮影はいいなあ、としみじみ思った。

炭を軽トラに運び込み、自宅へ運ぶ。

浅野家の土間でコーヒーとお菓子をいただく。

今、ユミコさんのお母さんが福島から来ていて

お茶請けは福島のお菓子だった。

浅野さんは再び仕事を開始。

カットした炭にドリルで穴を開ける作業。

その穴に植物を植え付けるのだ。

植え付けるのは主にユミコさんがやるそうだ。

浅野さんの仕事の撮影を終え、林に夕景を撮りに行く。

今日はさぎり荘へ泊まりに行く。

宿泊の用意をして、さぎり荘へ。

チェックインしてまずはお風呂。

てっちゃんも一緒に4人で夕食。

サフォーク定食をいただく。

夕食後、3人で尾澤酒蔵で買った真賞をのむ。

香りがよくホント、美味しい。

今日もいい一日だった。

信級日記 冬 vol.40

令和二年12月19日

8:30 朝食。ご飯、味噌汁。

今日はいよいよ水のパイプのチェックの日。

向かいの浅野さん、加藤さん、そしててっちゃんの3人が川に降りてパイプが詰まっていないか調べる。

てっちゃん水が

9:00 私と一坪くんは、外に三脚を立ててスタンバイ。

9:30 浅野さん、てっちゃんが川へ降りていく。

加藤さんも後に続いて川へ。

一坪くんもキャメラを持って川へ降りて行く。

川の水位はそれほど高くないが、流石に真ん中の方は膝下くらいの高さがあった。

浅野さんがジョイントの部分を外す。

小石が数個出てきたくらいだった。

これで水が出るようになったらラッキー。

もしちょろちょろのままだったら、てっちゃんの川からてっちゃんの家のラインに問題があるということなので、それは初めてのケースなので業者に見てもらうしかないということだった。

小一時間もかからず終わり、加藤さんの庭先でコーヒーをいただく。

加藤さんの奥さんのメリーさんがきゅうちゃんを保育園に送って帰ってきた。

加藤さんはご両親と一緒に隣の集落に宿をオープンしたそうだ。

一日1組限定の宿。

きっと素敵な宿なのだろうと思う。

加藤さんはその宿のお部屋に飾る炭盆を選びに隣の浅野家に移動。

浅野さんは東京へ持っていく炭盆を軽トラの荷台に積み込む。

その様子を撮影していると、てっちゃんがやってきた。

「水が出なくなった」

と。

あらら・・・

これは業者さんを呼んで直してもらわないといけないということになった。

そして撮影隊も困ったなあと。

そんな話をしていると、亡くなったマルカさんの息子さんが家の合鍵を浅野さんに渡しにやってきた。

誰も住む人がいなくなった家をお隣の浅野さんに管理してもらうことにしたそうだ。

マルカさんの息子さんが、

「水もお湯も出るし、布団もあるのでよかったら使ってください。」

と言ってくれた。

浅野さんが撮影隊の事情を話してくれていたのだった。

ありがたかった。

てっちゃんの家の水がとうとう出なくなったので、炊事と食事だけ使わせていただくことにした。

早速浅野さんが、家の中をざっと見せてくれた。

つい最近までマルカさんが暮らしていたんだなあと改めて感じた。

そして出来立ての合鍵を預かった。

早速マルカさんの家に炊飯器を持っていき、夜ご飯のお米をといで仕掛けた。

昼ごはんはひはら食堂へ。

信級に戻り、西川家に寄る。

西川さんは、冬は勉強とおさんどんをしているとのこと。

心ちゃんは午前はさぎり荘でバイト、午後は新居の側溝のコンクリを剥がす作業をするとのこと。

そして外鹿谷の柳久保の高桑さんの家へ。

高桑さんは岩下に田んぼを借りていて、

かたつむり食堂の常連さん。

一度おうちに遊びに行きたいと思っていた。

一坪くんは柳久保へいくのは初めて。

私も2回目だ。

小学校から下る坂の雰囲気はネパールに似ている。

柳久保のバス停で高桑さんと合流し、柳久保池を案内してくれた。

紅葉がとても綺麗だそうだ。

この池は通年を通して釣り人がやってくる。

そして自宅へ。

道路から少し降っていくと、高桑さんの家があり、開けた景色が広がっていた。

高桑さんは東京で子育てをしている時にノイローゼ気味になったそうだ。

そして水があって食べ物がつくれて果樹園のない土地を探した。

それで見つけたのがここだ。

初めは別荘的に使っていたのだけど、12年前に完全にここに移住したそうだ。

その当時、柳久保には10世帯が暮らす集落だったが、今は5世帯。子供は一人もいないそうだ。

ご主人と二人で暮らしていたが、数年前に亡くなり、今は一人だ。

時々子どもとお孫さんがやってくるそうだ。

お家の中も見せていただいた。

どかーんとした気持ちの良さそうな家だった。

土間には薪ストーブ。

机の上には藁が並べてあった。

自分でしめ縄をつくるそうだ。

薪ストーブを焚いてくれ、お茶をいただいた。

なんでも、庭の高い木を数本、空師のヒロシさんに切ってもらうことにしているという。

ヒロシさんの仕事を信級で撮影できたらと思っていたので、それはぜひ撮影させてくださいとお願いすると、高桑さんはヒロシさんに電話をかけた。

私にも代わってくれて直接お話をした。

タイミングが合えば2月に撮影できるかもしれない。

高桑さんの家を後にして、帰る道すがら小学校の手前の坂道で、

散歩していた和正さんの弟さんと会った。

そして心ちゃんの家へ。

心ちゃんは一人で側溝のコンクリートと格闘していた。

石、泥をどけ、コンクリを砕き、引き剥がそうとしていた。

側溝のコンクリは2メートル以上はあり、とても一人で動かせる重さではなさそうだった。

撮影をしていた一坪くんはキャメラを止め、手伝いに回った。

なんとかひっぺがすことができた。

自分の体と頭を使って一つ一つ、自分の場をつくっている心ちゃんがとても頼もしく見えた。

16:00 かたつむり食堂へ。

石坂さんは、先日罠にかかったクマの肉を捌いていた。

大きな樽いっぱいにクマの油、レバーなど。

もも肉は細かく切って、ジプロックに入れていた。

熊肉は味噌煮も美味しいし、焼いても美味しいそうだ。

クマ油はかかとのひび割れによく効くそうだ。

去年、西川さんが「空想の森」を信州新町で上映会を開催してくれた。

その時、もっと多くの人に、とりわけ高校生に見てもらいたいということで、

西川さんが娘のマヨちゃんが通っていた犀峡高校の水野先生に話をしたそうだ。

「空想の森」の上映に興味を持った水野先生がぜひお話をしたいということで

石坂さんにお願いして食堂を使わせてもらうことになった。

水野先生がやってきた。

そして今の犀峡高校の状況を話し始めた。

そして「空想の森」を試写のDVDで観て、こういう暮らしや生き方もあるということを生徒にも見せたいと思ったそうだ。

生徒たちの心に響くような授業をしたいとも話された。

西川さんもやってきて3人で話をした。

上映はぜひやりたいとのこと。

ただ、どんな風にやるかをこれから考えていきますと水野先生は言った。

生徒のために、とこんなにも真面目に考えてくれる先生がいること。

とても嬉しくなった。

私もできることは協力していきたいと思った。

帰り際、石坂さんが熊肉を分けてくれた。

「無理しないでここに泊まっていいんだよ」

と、また言ってくれた。

「ありがとうございます。向かいのマルカさんの家も使わせてもらえることになったから大丈夫です。」

と答えた。

そして宿舎へ帰った。

台所へ直行し、水をチェック。

やはり、水は出ない。

といいことで、てっちゃんが作った味噌汁、茶碗、味噌汁碗、ヤカン、はし、お茶などを持って、橋を渡ってマルカさんの家に移動した。

コタツもストーブもすぐついた。

仏壇にご挨拶。

てっちゃんも初めて家の中に入ったそうだ。

ご飯、味噌汁、缶詰。

3人で夕食。

食器を洗って、戸締りして、火を消して、戸締りをして、宿舎に戻る。

コタツに入って、碁の話になった。

一坪くんが最近碁にハマっているとのこと。

「うちの親父が碁が大好きで、小学生の時よく打ってるところを見ていたんだ。どこかに碁盤と石があるはずだ。」

とてっちゃんが言った。

「そこに入ってるかも。」

とテレビの下の収納を指した。

一坪くんが戸を開けて、中に入っているものを次々出していく。

軍手、折り畳み傘、タオルが山のように出てきた。

「ここに来て8年。そこ初めて開いたて見たわ」

とてっちゃん。

「えっーーー!」

一坪くんが要るものと要らないものに分けていった。

結局そこには碁盤はなかった。

私の使っている部屋の奥の部屋の押し入れの中かもしれない。

ということで、一坪くんがまた探しに行った。

布団や服などをかき分け、押し入れの中を捜索。

「あったー」

と一坪くんの声。

てっちゃんは、

「あったー!、あったー!よかったー!」

と、飛び上がらんばかりに喜んでいた。

てっちゃんのお父さんが、家に来た人とよく碁を打っていたその碁石と碁盤。

確かに碁石は、独特の石でなかなかいい。

「これ一坪くんにあげるよ。」

とてっちゃん。

一坪くんは大事な碁盤なので恐縮して断っていたが

てっちゃんがもらって欲しいということで、ありがたくいただくことにした。

そして早速コタツで二人で碁を打った。

私はまったくルールを知らないので見ていてもよくわからなかった。

一坪くんに言わせると、親父が碁を打つのを見ていただけというてっちゃんはものすごく強かったそうだ。

視覚的に打てるから相当経験があると思うと言っていた。

「あーよかったー!」と何度も何度もてっちゃんは言った。

碁盤が見つかってよっぽど嬉しかったのだろう。

嬉しすぎて焼酎を飲むペースも早かった。

最後はそのままコテンと寝てしまった。