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旅する映画 その11 すぎな農園から榛東村へ

2009年4月9日。 7:30。起床。 8:00。朝の仕事を始める。 進さんはもっと早くから起きて仕事をしている。 母屋の前の水道で、数個の大きなポリタンクに水を汲む。 家と山の上の鶏舎の途中に、餌を調合する小屋がある。

右手の小屋が飼料小屋

ここで飼料の調合し、小分けにする。

ここで週2回ほど、餌の調合をしている 竹渕さんはおいしくて安全な卵のために、餌に大変こだわっている。 98パーセント以上国産の飼料。 小麦、米の粉、米ぬか、魚粉(酸化防止剤不使用)、 おから(国産無農薬大豆)、カキがら、醤油かすなど。

軽トラに水と餌を積み、まず山の上の鶏舎へ。 鶏に水と餌をやりと卵採りだ。

まずは餌と水だ。私が餌をやる。 鶏舎へ入ると、鶏が待ちきれないのか、まとわりついてくる。 何箇所かに置かれた餌箱に餌を入れる。 一つの肥料袋に入っている餌を一つの鶏舎に使う。 餌は15キロほどあり、結構重い。

一輪車に水のタンクを乗せ、進さんは水やりだ。 この水のタンク、かなり重い。 人が働いている姿ってかっこいいと思う。 特に体を使う仕事は。 無駄のない動き、ちょっとしたコツが仕事がやりやすくなったりする。 鶏舎の横には、開墾途中の畑が広がっている。 掘りおこした桑の木の根っこがあちこちに顔を出している。 その畑を悠然と歩いている白いネコが一匹、小さく見えた。 田代「あの白いネコ、竹渕さんちの?」 進さん「そう。ビビっていうネコで、家の中で飼ってるゲンちゃんとかのお母さんなんだ。」 田代「ビビ!」 ビビは歩みを止め、こちらを見た。 竹渕「俺が呼んでもいつも無視なんだよ。かみさんと間違えたのかな。」 私はちょっと嬉しかった。

卵小屋の下。割れた卵を食べに来たビビ。

竹渕さんは外ネコ、家ネコをあわせて6、7匹のネコを飼っているのだ。 ゲンちゃんは、大きな目が印象的なシュッとした美しいネコで、 私はなでたり、だっこしたくてたまらなかった。 しかしなかなか顔さえもよく見せてはもらえず、やっと私の前に顔を出すようになったくらいだ。 仲良くなるにはもっと時間が必要だ。 外ネコは、たまに餌を食べに帰ってくるくらいなのだそうだ。 ここんちのネコは幸せだ。 出入り自由で、畑や林、自由にどこでも遊びに行ける。 そして家に帰ればご飯もあたる。

そして二人でいっしょに卵採り。 朝は特に卵を温めている鶏が多い。5羽も6羽も重なっていたりする。 それをどかしながら、にーじゅういち、、にーじゅうに・・・ と数を忘れないように数えながら卵を採る。

ある鶏舎の中で、鶏が騒いで一斉に右や左に飛んで、 ブワーっと砂やら餌が舞い上がった。 […]

旅する映画 その10 倉渕・すぎな農園にて

2009年4月8日。 9:00頃目が覚めた。起きられなかった。 身支度をして下りると、すでに朝のひと仕事が終わっていた。 今日も気持ちいい天気。 私は仕事してないけれど、早速朝食。 智子さんの自家製パン、目玉焼き、ルバーブジャム、コーヒー、みかん。 おいしくいただく。

食後、進さんが車で倉渕(くらぶち)を案内してくれた。 こぶし、桜など花々が咲き誇り、すっかり春だ。

倉渕の野菜の出荷場。 今この近くで、農家の男衆が当番制で井戸を掘っている。 まだ水は出ていない。

倉渕パン工房 湧然

倉渕パン工房 湧然へ。 ここは竹渕さんの卵を使ってシフォンケーキをつくっている。 竹渕さんの卵だとよく膨らむのだそうだ。

パン屋さんの奥さんと竹渕さん

そして、上映実行委員のメンバーで、倉渕入植9年目の田中さんの畑へ。 耕二さんと悦子さんが畑で精を出していた。

悦子さんと耕二さん

育苗ハウスにはトマト、なす、パプリカ、ハーブなどの小さな葉っぱ並んでいた。 ポカポカあったかい育苗ハウスの中は、新しい生命力に満ちあふれている。

育苗ハウス

育苗ハウスを背にして、右手に小松菜の畑ともう一つ畝を切っている畑、 左手にはブドウ畑、手前にはルバーブが少々。

ルバーブ 「ここの畑はこれだけあっても出荷するのは小松菜だけなんです。 あとは自分たちで食べるための畑なんです。」 と悦子さんが笑った。

ブドウ畑

今の時期は、耕二さんは苗の世話、悦子さんは、ブドウについている虫を皮をめくり、 1匹1匹手でつぶすという気の遠くなる作業をしている。 ひとえにうまいワインを飲みたいが為だ。 「ブドウには3種類、駆除しなきゃいけない虫がいるんですが、 そのうちの1種類は、春先の今時期に退治しなくては、後で大変なことになるんですよ。」 と悦子さん。 あとの害虫は、常時駆除する虫、実がついた時に駆除する虫がいるそうだ。

今のブドウは枝の選定作業が終わったところ。 山葡萄とかけ合わせのヤマソウ、メルロー、など数種類のブドウを80本ほど植えている。 枝を2本残すのだが、何かあった時の予備で3本残している。 支柱と枝を這わせる頑丈なひもがはられている。 今は細い枝だけの姿だが、これから枝が伸び、 葉っぱが生い茂って緑の壁になって実をつけるのだ。

[…]

旅する映画 その4 名古屋再び

空色勾玉にて 2009年3月23日。 「空想の森」名古屋上映実行委員会。 朝6時に宿を出発し、名古屋を目指す。 草津線の貴生川駅まで宿の人に送ってもらう。 天気はいいがとても寒い。 ここからまた、各駅電車を乗り継ぎ、名古屋まで向かう。 途中四日市など通過した。 三重県を通っているなんて、なんか不思議な感じがした。 名古屋に10時頃到着。 前回名古屋のシネマスコーレで上映した時に泊めていただいた吉田真由美さん (ベコちゃん)と待ち合わせていた。 この日、彼女は仕事が夜勤明けの日で、 実行委員会の前に少し話そうということで前から約束していた。 実行委員会が開かれる空色勾玉の近くの喫茶店に入った。 私は余呉と大津、水口城南を回ってきた直後でテンションが高く興奮していた。 しかし、彼女も私に負けないくらいしゃべる人なので何も問題はなく、 時間ぎりぎりまでおしゃべりをした。 お昼12時、空色勾玉にいくと、店主の谷陽子さん、 今回の実行委員長の北村彰彦さんなど、何人かの人がもう来ていた。 右が今井ゆかりさん。(聡美さんの友人) 蔵を改造したお店はなかなかいい雰囲気。 しかし、私はまだ興奮していて、 北村さんに今までのことを一通り話さないと 次に進めなかったので、一気に話した。 お店はお休みの日だった。 谷さんがわざわざ昼ごはんを作って出してくれた。 玄米と味噌汁とおかず。とってもおいしかった。 今度また食べに来たいと思った。 左が高橋幸子さん。隣は母上。 この日は、平日の真昼間だし、5,6人くらい集まる感じかなと思っていた。 13時、始まる時間になった。 この時点でもう10人以上は集まっていた。 まず自己紹介から始めたが、それからもばらばらと人がやってきて、 何度も初めから仕切りなおした。 最終的に24人の人が集まった。 すごいと思う。 酒を抱えて前田壮一郎さんが余呉からやってきた。 飲める人は飲みながら話し合いをすすめた。 左が前田さん。なぜか丸坊主になっている。 右は実行委員長、北村彰彦さん。 北村さんが、現段階で決まっていることを報告。 上映会の時期は秋。 自分の母校、矢田小学校の体育館でやろうと。 介護ヘルパー、学童保育士、学生、カフェ店主、酒屋、会社員、 英語の先生、グラフィックデザイナー、手話通訳者などなど様々な職種の人が集まった。 ホアキンさん、谷陽子さんと 日本人だけでなく、スロバキア人のジョイ、スコーレに見に来てくれた スペイン人のホアキンもメンバーだ。 左はべこちゃん。 会計、事務局なども決めよう、予算をたてなくては、実行委員会名簿をつくろうなど、 イベント運営経験者の人が意見を出したり、こんなに人数いるのだから、 もう一箇所上映会やろうとか、話があちこち飛びながらも、 初めての実行委員会としてはなかなかよかったのではないかと私は思う。 […]

旅する映画 その2 滋賀県大津

ソラノネにて。原田さん一家。 将さん、珠宇ちゃん、麻利さん。

2009年3月21日。 9時頃起こされた。 もう帰った人も多く、残った人はあらかた朝ごはんを終えていた。 私もご飯と味噌汁を食べた。 みんな手分けして食器を洗ったり、テーブルをふいたりして、撤収の準備をしている。

私はこの日、大津へ帰る原田さん一家に同乗させてもらい、 原田さんが大津で今いっしょに自主上映を企画している仲間に会いに行くことになった。

前田さんたちとお別れした。 前田さんは名古屋出身で、実家に帰る用事もあり、 3月23日の空想の森名古屋実行委員会に彼も参加することになったので、また会える。 それも楽しみだ。

スカッと晴れたドライブ日和だ。 原田一家の車に乗り、 まるで海のような琵琶湖を左に眺めながら大津方面に向かった。 原田さんは旅行中に私の友人とインドで出会い、 それが縁で私の映画の上映会を自分の町でやってみたい と申し出てくれていた。

原田さんは話がうまい。 情景が浮かんでくるしゃべりをする。 昨夜一晩中と大津に向かう車中で原田さんの物語を聞いた。 年齢、性別、育った環境、やってきたことなど全く違うのに、 なぜか共感できたり分かり合えたりして、 ちっとも話が尽きないのが不思議なほどだ。

山の方へどんどん入っていく。 小高いところに畑が広がっていた。

ソラノネの店内 360度見渡せるところに「ソラノネ」(安曇川泰山寺ソラノネ紀伊国屋) というお店が立っていた。

気分のいい場所だった。 この店をやっている人が原田さんの仲間の一人で BlueberryFieldsの社長の岩田康子さんの息子のツヨシさんだ。

かまど小屋ブルーベリーの畑、かまどが並んだ小屋、半円の店。 かまどでご飯を炊いている人たち、 お客さんでにぎわっていた。 私たちはここでケーキとお茶を飲んだ。 ここでとれたブルーベリーのケーキはとってもおいしかった。

仕事の合間をぬって、ツヨシさんと少し話をした。 大津で上映会をぜひやりましょう!と。

カフェテリア結 ソラノネを後にして、私たちは成安造形大学の構内にある「カフェテリア結」に向かった。 原田さんたちはここを上映会場として考えていた。 大学の構内なので、人も集まりやすいし、機材もそろう。 木造でなかなかいい感じの建物だ。

結のランチ

原田さんは以前この結の店長をしていた。 この日、たまたまこの店の社長の岩田康子さんがお店にいらした。 […]

旅する映画 その1 滋賀県余呉映画祭 

前田壮一郎さん

2009年3月19日。 私は名古屋から各駅電車を乗り継ぎ、 滋賀県の琵琶湖の北、余呉駅に降り立った。 もう辺りは真っ暗だった。

今回私をよんでくれた前田壮一郎さんと、 仲間の田中純子さんが、小さな駅舎で出迎えてくれた。

前田さんは5年前に名古屋から余呉に移り住み、 5町の田んぼで米をつくっている野良師。 澄んだ眼をした青年だ。 冬は地元の冨田酒造で酒をつくっている。

田中さんは、今回映画祭の会場となるはごろもホールで働いている。 この日私は、田中さんのご実家に泊めていただくことになっていた。

前田さんの愛車に乗り、田中さんのご実家、 琵琶湖に面した飯浦という集落に三人で向かう。 ご両親はご健在で今はキノコを栽培したり畑を耕している。

田中さんの実家 田中さんは近々、この実家で農家民宿を始めようと計画している。 その最初のお客さんが私ということになった。

夜10時少し前、お宅に到着。この地域独特の瓦屋根の立派な家だった。 お父さんの内貴一男さん、お母さんの内貴和野さんがにこやかに出迎えてくれた。 お茶、手作りの牡丹餅や干し柿、ケーキなどを出してくれた。 前田さんは明日からの映画祭の準備もあり、少しお話をしてから帰っていった。

私と一男さんはその後もしばらく話をした。 昔、山を越えて田んぼに通っていた話、どうやって収穫した米を運んできたかなど、 興味深い話を色々うかがった。

内貴一男さんと和野さん

生まれ育ったこの土地で懸命に働き、子を育て、 親を看取り生きてきたという誇りがこのご夫婦に感じられた。

初めて来た滋賀県。初めて会う人たち。 明日はいよいよ上映だ。少し興奮しながらも眠りに落ちていった。 2009年3月20日。 翌朝、部屋の窓から外をみると、琵琶湖が見えた。 ここは山間の集落であることがわかった。 一男さんいわく、この家の二階からの眺めが一番だとのこと。

二階からの眺め 琵琶湖でとれたえび、菜っ葉のおひたしなど 手作りのおかずが並ぶ朝食をいただいた。

朝食 そして8時過ぎ、内貴さんご夫婦を別れ、 迎えにきてくれた田中さんと共に上映会場に向かった。

道中目にした余呉湖は小さな静かなたたずまいの湖だった。

はごろもホールに到着。図書館も併設されている立派なホールだった。 早速みんなで上映準備を始めた。

私はまず画と音のチェック。 前田さんは受付のセッティング。 受付横のカウンターではコーヒー屋をやる人たちがやってきた。 ピンクのジャケットを着ているのが田中さん 10時からまず一回目の上映。上映前にご挨拶をした。 会場内がなかなか温まらなかった。 […]