「HP見ています。ありがとう。」
大間の漁師・山本さんからのメールだった。
今日は天気がいいから、きっと海の上からのメールなのだろうなあと思った。
私は嬉しくなって、すぐさま今回の撮影の写真をアップした。
午後、山本さんから電話がきた。
先日の大間での澤井さんの学習会。
山本さんにとっては、くやしくて、くやしくて、とてもガックリしてしまった出来事だった。
来てほしい人に学習会のチラシをギリギリまで手渡しで配っていた山本さん。
その時は手応えを感じていた。
きっと5人くらいは来てくれるのではないかと密かに期待していた。
会場には110人もの人が集まった。
が、そのほとんどは大マグロックに参加した人たちで、
大間の人はほとんどいなかった。
そして、山本さんが声をかけた人は、一人も来ていなかった。
その晩は何とも言えない思いが込み上げてきて眠れなかったそうだ。
翌日、一人山へ行き、大声で叫び、ようやく気持ちが落ち着いたという。
その晩は寝ながら歌うたってたって母ちゃんに言われた。
と山本さんは笑った。
大間で漁師として暮らし、原発建設問題で大きな挫折を経験しながらも、
すっと原発を反対し続けてきた山本さんの気持ちは、
私には計り知れない。
「一人の人に伝える。そうすれば、その人が違う一人に必ず伝えてくれる。」
野村さん、いいこと言っていたな。
でも大間ではその一人が見つからないんだよ。
山本さんは絞り出すような声で言った。
「でも絶対にあきらめないよ。」
と力のこもった声できっぱりと言った。
私は大間に山本さんがいるということだけで、どんなに心強く、そして嬉しいことかわからない。
山本さんという人に出会えたことだけでも、私は新しい映画を撮り始めてよかったと思う。
3.11がなければ、山本さんには出会っていなかった。
3.11後、各地で素晴らしい人たちにどれだけ出会ってきたことか。
日本も捨てたものじゃない、これは変わる大きなチャンスだ。
そう思えて、今まで撮影を続けてきた。
「今まで色々とどうもありがとう。もうしばらく会えないかもしれないけど、元気で。」
なんて、まるでもう会えないようなことを山本さんが言うから、
「こちらこそありがとうございますですよ。また撮影に行くかもしれないから油断しないでくださいね。」
と私。
「楽しみ待ってます。」
と山本さんは言ってくれた。
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